諸反応活性や賦存量および経済的優位性が認められていながら、素材原料としては未活用であり、我が国に十分な鉱量で産出する粘土鉱物、火山灰、土壌鉱物等のケイ酸塩系の天然資源鉱物から、特異なイオン吸着固定特性や触媒活性を有する新規の無機環境浄化素材を探索してその調製プロセスを確立し、その効果の実用的評価法を構築することを目的として、研究を展開した。 探索の結果、国内において、比較的純度が高く、合成阻害成分が少なく、鉱量が十分かつ採掘が容易とされる天然資源鉱物として、鹿児島県鹿屋産パミス、島根県出雲産モルデナイト、および鳥取県倉吉産アロフェンを選択し、これらを出発原料として、マテリアル・インフォマティックスのAI検索結果に基づき、陽イオン交換の高選択性・大容量の吸着物質として、LTA、FER、CHA型ゼオライトおよびジオポリマー硬化体について、有機構造規定剤を使わない(SDA-free)、種結晶法による単相合成の最適条件の確立を行った。 また、得られた規則的ナノ細孔質無機物質のバルク試料の550 ℃までの加熱挙動について、ハイパースペクトルカメラおよびサーモグラフィーカメラの同時測定による、主に細孔内の水および重金属イオンの拡散移動や加熱相変化による組織変化を時分割で速度論的に評価した。 さらに、本研究において作製した高イオン選択交換・吸着材について、何種かの重金属イオン水溶液およびVOCガスを最適条件で接触させ、それら重金属イオンおよびVOCガス分子の吸着、拡散および触媒分解挙動を、時分割測定で画像解析を行った。これにより、対象とする重金属イオン、VOC種ごとに適したイオン交換・吸着材の設計と、社会実装に足るコストと供給量を満たす原料鉱物資源の選択と合成プロセスの提案を行うに至った。
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