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2020 年度 実施状況報告書

イオン交換/キレート繊維を用いた半導体めっきゼロ・エミッションプロセスの構築

研究課題

研究課題/領域番号 20K12248
研究機関奈良工業高等専門学校

研究代表者

中村 秀美  奈良工業高等専門学校, 物質化学工学科, 教授 (70198232)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード吸着 / ゼロ・エミッション / リサイクル / 排水処理 / めっき
研究実績の概要

持続可能な開発目標(SDGs)への取り組み、環境問題への意識の高まりから、リサイクルへの関心が高まっている。半導体をめっきする際に生じるスラッジにはNiやSnといった有価な重金属を多量に含んでいるものの、それらの分離・回収・再資源化技術は確立されておらず、ほとんど再生利用されることなく産業廃棄物として処理されている。価格の高騰や資源の枯渇の観点からも地下に鉱山資源を保有しない日本が、地上の都市鉱山とも呼ばれる金属廃棄物から有価金属を分離し、リサイクルする技術の開発は喫緊の課題である。本研究では半導体めっき工程において生じるスラッジや廃液から、社会実装に向けて新規に開発したイオン交換/キレート繊維の吸着技術を利用して有価金属を分離・回収し、無廃液、無排水のゼロ・エミッションプロセス構築を目指すことを目的として、バレルめっきの際に生じる廃棄メディアの表層を剥離し、酸に溶解して得られるスラッジ溶液から、吸着法を用いてNi及びSnを分離・回収・再資源化するシステムについて検討を行った。
チップコンデンサーをめっきする際に使用された廃メディアは表層にNiやSnといった有価な重金属を多量に含んでいるものの、それらの分離・回収・再資源化技術は確立されておらず、再生利用されることなく産業廃棄物として処理されている。4種類のイオン交換/キレート繊維のNiおよびSnの吸着平衡特性を検討した結果、弱塩基型キレート繊維はSnを迅速かつ選択的に吸着できることが明らかになった。さらに、めっきスラッジをHClに溶解したスラッジ溶液に適用したところNiおよびFeとSnの分離が可能であることが分かった。カラム法における破過・溶離曲線の検討からも NiとSnの完全分離が可能であり、Snを濃縮回収できることが確認された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

今年度はコロナ禍の影響で、十分な研究活動時間が確保できなかったこともあり、当初予定していた計画より、少し遅れることとなった。
バレルめっきに代表される半導体めっき工程では、めっきの際にメディアと呼ばれるステンレス球が使用され、表層にNiやSnが積層した多量の廃棄メディアが生じる。セラミックコンデンサーのNiやSnのバレルめっきで使用された廃メディアから焼鈍法によってNiおよびSnを多量に含む表層の剥離に成功したが、表層剥離後のメディアの寸法が不揃いであり、さらに寸法安定性を高める必要があることが分かった。
また、強酸性領域でも使用可能なイオン交換繊維を開発し、タイプの違うイオン交換/キレート繊維を用いて、めっきスラッジを強酸の塩酸で溶解した水溶液からNi及び Snの分離・回収を試みたところ、弱塩基型キレート繊維はSnを迅速かつ選択的に吸着し、Ni、FeとSnを分離可能であることが明らかとなった。HCl溶液中では弱塩基型キレート繊維の官能基とSnイオンが錯体形成を行うことによって吸着すると考えられた。一方、吸着されたSnは水で容易に脱着可能であることが分かった。
次に、カラム法を用いて流速を変化させてスラッジ溶液の吸着分離実験を行ったところ、得られた破過曲線よりSnはしばらく破過せず吸着されたままであるのに対し、Niはほとんど吸着されずに流出することから、NiとSnの分離が可能であることが明らかになった。一方、吸着したSnは水を溶離液として用いることで簡単に溶離することができ、約1.5-2.0倍に濃縮回収されることが分かった。

今後の研究の推進方策

①イオン交換/キレート繊維を用いて、低濃度のNiおよびSnを含む排液からの分離特性の検討を行う。溶液のpHを変化させて、Sn2+イオンとSn4+イオンが吸着に及ぼす影響について検討し、溶液の劣化の原因を明らかにするとともに、酸化を抑制する方法について検討を行う。また、無廃水、金属イオン完全回収の観点から、プロセス全体のゼロ・エミッションの可能性について検討を行う。
②イオン交換/キレート繊維を用いて、高濃度のNiおよびSnを含む廃液・汚泥スラッジからの金属分離回収の検討を行う。基本的にはメディアから剥離しためっきスラッジの検討結果を適用することが可能であると考えられるが、雑多な他の金属イオンが含まれている可能性もあり、その場合はイオン交換/キレート繊維の追加等、新たに最適なプロセスを構築し、分離性能について明らかにする。
③新しくイオン交換繊維/キレート繊維を不織布にした円柱型カートリッジ(内径3 cm、外径6.5 cm、長さ25 cm)を開発し、ハウジングに装着したスケールアップ検討装置を試作する。連続的にスラッジ溶液及び溶離液を所定の流速で循環して流し、Ni及びSnの吸・脱着操作を行い、その分離特性を明らかにする。さらに、発生スラッジ量、産廃コスト、分離回収費用、販売価格等を考慮して、経済コストの計算を行い、本研究の優位性を明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

当該年度に予定していた備品の価格が上がり、購入することができず、次年度交付額との合算で購入予定となったため。

  • 研究成果

    (1件)

すべて その他

すべて 備考 (1件)

  • [備考] 中村研究室・林研究室 ホームページ

    • URL

      http://chemhp.chem.nara-k.ac.jp/content/images/Private%20Directry/Hayashi/index.html

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公開日: 2021-12-27  

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