研究実績の概要 |
2020年度は、食品廃棄物のメタン発酵により生成するCO2とCH4の分離が可能な、膜を開発した。既に、食品ゲルを主とした高圧に耐性を有する、高性能な分離膜を開発している。通常、この膜中には、ポリビニルアルコール(PVA)を配合する。PVAを膜中に配合すると、ガスの透過を制御できる。例えば、膜中のマトリックスの反応性を高めることが出来れば、分離膜の機能性も高めることが可能であると予測した。そのため、2020年度は、膜中に配合しているPVAを、反応性を有するアニオン変性のPVAに変化させて膜作製を行った。すなわち、分離膜の改良検討を行った。この改良検討と併行して、作製した分離膜に添加する炭酸塩の最適な濃度を探索した。炭酸塩は、CO2の分離性能を高める機能を有する。探索手段として、①作製した膜に炭酸塩を0, 0.005, 0.01, 0.015, 0.02, 0.025, 0.03gを添加し、これらの膜を、85℃, 加湿条件下で、CO2(80%)とHe(20%)による分離性能を評価する。②①の分離性能の評価時において、大気圧から加圧した際の耐圧性も確認する。③①②の結果から、最も分離性能が高かった時の、添加した炭酸塩の濃度条件を確認する。 先ず、分離膜に炭酸塩を0.015gから0.03gの添加すると、大気圧で比較的高い分離性能(QCO2:≒2.1E-10,αQCO2/QHe:300-600)を示した。この結果より、膜中の機能を変化させた新たな分離膜を開発できたことを確認した。また、この膜は0.7MPaに加圧した際、QCO2: 1.01E-10, QHe: 5.88E-13, αQCO2/QHe=172という、高性能な結果が得られたため、加圧に対する耐性も有していることを確認した。加えて、分離性能の高さという点での、この膜に添加する炭酸塩の最適な濃度範囲も明らかにした。
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