研究課題/領域番号 |
20K12252
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研究機関 | 公益財団法人地球環境産業技術研究機構 |
研究代表者 |
伊藤 史典 公益財団法人地球環境産業技術研究機構, その他部局等, 研究員 (10366429)
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研究分担者 |
山田 秀尚 金沢大学, 先端科学・社会共創推進機構, 准教授 (60446408)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 分離膜 / CO2分離 / メタン発酵 / 分離性能 / 選択性 |
研究実績の概要 |
2021年度は、2020年度に開発した食品ゲルを主とした高性能な膜に対して、多様な試験条件での分離性能を評価した。CO2/He=80/20の混合ガスに対し、85℃での加湿下での分離性能を評価した。その際、全圧: 0.7 MPaでは、QCO2: 1.0E-10, 選択性は150以上であったことを確認した。次に、85℃での加湿下における、CO2/He=40/60の混合ガスに対する分離性能も評価した。結果、全圧: 0.1 MPaでの分離性能は、QCO2: 2.45E-10, 選択性は約800であった。また、全圧: 0.7 MPaでは、QCO2:1.28E-10, 選択性は約240であった。これらの結果から、開発した膜は、高性能なCO2分離膜であることを確認した。 メタン発酵後、CO2/CH4=40/60の混合ガスが生じると言われている。開発した膜が、メタン発酵後に生じるガスに対しても高性能な分離が可能か評価した。すなわち、85℃、加湿下で、全圧: 0.7 MPaで、CO2/CH4=40/60の分離を評価した。結果、QCO2: 1.05E-10, 選択性は900以上であった。ここで、同じ全圧 (0.7 MPa)での、CO2/He=40/60の分離性能評価結果と比較した。結果、QCO2はほぼ同等であった、そして、選択性は、CO2/He時と比べて、CO2/CH4の方が約5倍高かった。 以上の検討により、開発した分離膜が、メタン発酵後に生じる混合ガスの分離においても適用が可能であることを確認した。また、Heに比べてCH4の方が、より効果的に分離精製が可能であることも確認できた。 今後、開発した膜に対し、多様の試験条件でのCO2/CH4の分離性能を評価し、より性能が高い条件を見出す検討を実施する予定である。また、分離回収したCO2を固定化するための技術開発も、併行して実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度の成果に引き続き、2021年度は、開発した膜が、メタン発酵後に生じるガス (CO2/CH4)に対して、分離が可能かどうか検討した。結果、0.7 MPaでの分離に対し、選択性が900以上であった。この結果から、開発した膜は、メタン発酵後に生じるガスに対し、非常に高性能な分離膜であることが証明できた。これらの結果は、当初、予定していた分離性能を超える結果であった。そのため、現時点で本事業は、「おおむね順調に進展している」と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、開発した分離膜が、メタン発酵後に生じる混合ガスの分離においても適用可能であることを確認できた。2022年度は、メタン発酵後に生じる、CO2/CH4=40/60のガスの分離に対し、より多くの試験条件で性能を評価することでの、プロセスの適合化を図る検討を実施する予定である。 また、産業廃棄物からCaを効率的に抽出させる手段を見出し、分離回収したCO2と接触させて、CaCO3を合成する。結果、分離したCO2を固定化させるための技術開発を実施することも予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は、メタン発酵によって生成するガスの分離が可能である、膜を開発した。2021年度は、この膜に対し、多様な試験条件での分離性能を評価した。その後、メタン発酵後に生じるCO2とCH4の分離においても、高い性能を示した。 2020, 2021年度の2年間は、膜の開発に対する鋭意検討が必要であると考えており、そのための経費がより必要であると考えていた。しかしながら、この2年の内で、想定していた以上に早く分離膜を開発することが出来た。この喜ばしい成果により、当初予定していた支出を顕著に下回る結果になった。 また、本PJに関連した市場調査、および外部発信等を目的とした出張等が、新型コロナの影響により、全て不可となり、予定していた旅費の使用が困難であった。以上の理由が、次年度使用額が生じた理由である。 ただし、この2ヶ年の成果を、今後、英文ジャーナルへの投稿、学会等の発表等の外部発信を積極的に行うことを予定している。また、これまで困難であった市場調査を目的とした出張を行うことも考えている。これらを2022年度の使用計画の一つと考えている。
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