研究課題/領域番号 |
20K12259
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研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
小畑 建太 愛知県立大学, 情報科学部, 講師 (80758201)
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研究分担者 |
吉岡 博貴 愛知県立大学, 情報科学部, 教授 (40332944)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 統融合 / 植生指数 / 緑被率 / 静止衛星 / 低軌道衛星 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,地球観測衛星群による陸域植生の正確な時空間変動量の定量に向けて,センサの不均一性によって生じる植生データプロダクトの系統的な差を低減する手法開発と実証を行うことである。本研究課題に関する具体的な取り組みは,植生プロダクトのセンサ間変換手法の開発(理論およびアルゴリズム),実データによる手法の実証,および手法の不確かさ解析である。 本年度は主に大気上端反射率データへの適用を前提に,植生指数のセンサ間変換を目的とした基礎的な手法を開発し,その実証を行った。線形混合モデルにもとづいて植生指数のセンサ間変換式に関する理論を構築し,式中のパラメータ(エンドメンバー)を自動抽出する簡易的なアルゴリズムを開発した。手法の実証には近年陸域環境観測のコミュニティでも利用が拡大している静止衛星と低軌道衛星のデータを用いた。以下に具体的な成果をまとめる。 (1)植生指数変換式の導出:線形混合モデルの枠組みを用いて,緑被率を媒介変数としたセンサ間植生指数変換式を導出した。 (2)エンドメンバーと緑被率の抽出アルゴリズム開発:線形混合モデルにもとづき,エンドメンバー推定アルゴリズムを開発し,低軌道衛星と静止衛星搭載データによる数値実験(評価)を実施した。その結果は(1)の式が正しく機能することを示唆するものである。 (3)植生指数変換の基礎的な手法の開発と実証:上記の導出式とアルゴリズムを統合し,植生指数のセンサ間変換の基盤となる手法を開発した。低軌道衛星と静止衛星搭載の大気上端データに適用し,一定の条件下で植生指数の正確な変換を確認している。現在この成果に関する論文の投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
センサ間植生指数変換の基礎的な手法の開発と実データによる手法の実証(日本国内対象)を実施できたことから,当初の計画以上に順調に進展しているといえる。特に,実データに対して頑健な基盤的手法を開発できており,その点が主な理由である。 重要な成果は以下の三点である。一つ目は,センサ間で等価であるべき物理量(緑被率)を媒介とした植生指数変換式を導出したことである。二つ目は,異なるセンサの実データにエンドメンバー抽出アルゴリズムを適用した結果,式の導出で前提としている条件(複数センサによる緑被率の一貫性)が結果から確認できたことである。三つ目は,その箇所において植生指数のセンサ間変換手法を適用したところ,十分な精度で変換が実現できることを確認したことである。
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今後の研究の推進方策 |
(1)同一または異種大気補正レベルデータ間での植生指数変換の検討・評価:大気上端以外の大気補正レベルデータを使った植生指数変換手法の実証を進める。また,大気上端の植生指数から直接大気補正済の植生指数へ変換することの実現可能性についても,モデルシミュレーションと実データによる数値実験の二つの観点から検討する。実データによる実験では,静止衛星,中分解能衛星,高分解能衛星等による地球観測データを用いる。 (2)基礎的な手法から応用的な手法への発展:時系列データを対象として植生指数変換を可能にするため,基礎的な手法をベースとした植生指数変換アルゴリズムの開発に着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加予定であった国際会議等がオンライン主体へ変更となり旅費の利用がなかったこと,また,今年度は植生変動観測に有効な高時間分解能衛星データを主に利用すべきと判断し,当初購入予定であった高空間分解能衛星画像データセットの購入を次年度以降へ変更したため。 今後の使用計画としては,高空間分解能衛星画像データセットの購入費用,成果公表のための費用,データ保管用ハードウェアの費用に充てる予定である。
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