本研究は,地球観測衛星群による陸域植生の正確な時空間変動量の推定に向け,センサやプロダクト生成処理アルゴリズムの不均一性によって生じる植生データプロダクトの系統的な差の低減手法開発と実証を目的としている。本研究課題に関する具体的な取り組みは,植生プロダクトのセンサ間変換手法の開発(理論およびアルゴリズム),実データによる手法の実証,および手法の不確かさ評価である。 本年度は,これまでに開発した線形モデルにもとづく基礎的な手法をベースに,反射率のセンサ間変換理論構築とアルゴリズム開発・評価を進めた。特に,Landsat衛星による評価では,アルゴリズムの正確さに関して多面的な統計的分析を行い,不確かさの要因についても分析した。その結果,既存研究の結果と比較しても十分な変換精度を達成していることが確認でき,不確かさの主な要因を特定した。その後,それら研究成果を国際学術誌へ投稿し,研究期間が終了してから約1ヶ月後(令和6年5月)採録に至った。 期間全体を通しては,まず前半の期間に植生指数を対象としたセンサ間変換理論・アルゴリズムを構築した。その後,気象衛星と極軌道衛星データを用いたアルゴリズムの実証を行い,十分な変換精度が達成できることを確認した。しかしながら,当アルゴリズムは適用範囲が一部の植生指数に制限されるものであった。そこで,後半の期間には,植生指数を求めるために利用する反射率の段階でセンサ調和ができるよう理論・アルゴリズムを新たに構築した。その後,Landsat衛星による実データを用いた実証を行い,十分な変換精度の確認と不確かさ要因の特定を進めた。
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