沿岸生態系での高い炭素貯留量で注目されているマングローブの植林及び再植林による生態系炭素貯留量と炭素貯留速度に関して、タイ南東部でのエビ養殖放棄池での再植林地域、沿岸部の新規植林地域、及び、原生林を研究対象地域として、最新の研究成果を国際学会にて報告した。具体的には、エビ養殖放棄池での再植林後19年まで、新規堆積土壌地域での新規植林後11年までと25年、40年経過後までを対象とし、さらに、約80年以上生育した原生林との生態系炭素貯留量と土壌特性などの比較を行った。その結果、原生林での生態系炭素貯留量と比較して、対象とした植林、再植林試験区ともに低い値が得られたが、植林後の経過年数に伴う増加と高い炭素貯留速度を確認できた。また、原生林との比較により今後の炭素貯留量増加の可能性も示唆された。 さらに、上記の対象地域における土壌中の炭素・窒素含有量の定量分析以外にも、リン、マンガン、硫黄、形態別鉄の含有量測定及び解析を継続した。そして、各試験区(エビ養殖放棄池での再植林、新規堆積土壌での新規植林、原生林)での経過年数別、及び、土壌深度別での土壌物理性、化学性を中心とした土壌特性と生態系炭素貯留との関係性を評価した。その結果、土壌化学性、物理性、及び、化学量論比との土壌炭素貯留及び生態系炭素貯留との関係性を確認することができ、炭素貯留メカニズムにおける新たな知見が得られた。 最後に、ブルーカーボン生態系修復としてのマングローブ植林、再植林技術を、炭素貯留の観点などから温暖化対策技術としての評価を行った。その結果、マングローブ植林、再植林技術導入における生態系炭素貯留量の増加や生態系修復の知見から妥当性を示すことができた。その他にも、バイオマス資源としての利用や生態系修復に伴う地域の経済性向上、また沿岸生態系の環境改善における効果なども含めた新たな評価の必要性も確認することができた。
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