研究課題/領域番号 |
20K12262
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
西原 昇吾 中央大学, 理工学部, 共同研究員 (90569625)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ため池 / 生物多様性 / 水生昆虫 / 水生植物 / 防災 / 維持管理 / 水位変動 / 工法 |
研究実績の概要 |
全国で16万ヶ所以上存在する農業用ため池は多面的機能をもち、生物多様性保全に大きく寄与し、多くの絶滅危惧種が残存する。しかし、近年の管理放棄、さらには集中豪雨災害にともない、ため池を改廃する動きが急速に進行し、2019年の「農業用ため池の管理及び保全に関する法律」に続き、翌年には「ため池工事特措法」も施行された。7万弱が防災重点ため池に選定され、管理が求められているが、廃止の動きも加速化している。一方で、規模が小さく、ため池データベースに未登録の池も廃止のおそれがある。そのため、水生生物にとって重要なため池を選定し、保全することは喫緊の課題である。 本研究では、防災重点ため池の中で、絶滅危惧種の水生生物の多い池などについて、保全上重要なため池として選定する手法を開発し、その成果を行政と共有し、ため池の保全を進めている。また、ため池の水深や水位変動が水生生物に及ぼす影響を明らかにするために、大小様々な規模の池を創出し、野外操作実験を開始した。 石川県の防災工事前後の池の水生昆虫の種数は、完全に水位を下げた池では15~30%に減少し、水田と同様の生物相であったのに対し、1mほどの水深を残した池では38~89%に減少したが、残存水域でゲンゴロウ類などの絶滅危惧種も確認された。加えて、浅い部分は湿地化しミミカキグサなどが確認され、堤体から離れた水域ではアメリカザリガニなどの侵略的外来種が進入しにくく、シャジクモなどが確認された。しかし、水位低下により、ため池に依存するマルコガタノゲンゴロウ、マダラナニワトンボは確認されなくなった。また、本研究におけるため池調査で、国際的な絶滅危惧種ムジナモが確認されたことは、保全上重要なため池が各地に残存する可能性や、周辺環境の改善により絶滅危惧種が出現する可能性を示唆している。これらの結果を通じ、今後の生物多様性保全に向けた、ため池の管理指針を示す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症のために、今年度も一部の現地調査は制限された。そこで、石川県のため池の生物相に関する予備調査の結果を整理するとともに、最重要である池での調査を継続し、防災重点ため池の現状、工事後の状況について把握した。一方で、行政との協議を再開したが、現地における地域住民とのやり取りは不可能であった。また、岩手県における野外操作実験用の池は2021年に創出され、生物相調査を継続している。
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今後の研究の推進方策 |
防災重点ため池の中で、重要な池の現状調査を進め、中でも保全上重要な種の生息状況を調査し、工事によって残された水位との関係を引き続き検証する。また、野外操作実験用の池での調査を継続し、水深や水位変動が水生昆虫に及ぼす影響について検証する。これらの結果に基づいて、適切な水位を維持する様な維持管理手法、工事手法を明らかにし、行政とともに現場で実践する。新型コロナウイルス感染症の状況が落ち着くとともに、地域住民へのアンケートなどによる、利用管理状況の解明や、地域の保全への意識の向上につながる方策の検討を開始する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のために調査地への移動が制限され、野外調査が限られ、また、交通手段が当初の予定から変更となったため。今後、新型コロナウイルス感染症の状況が落ち着いてきた段階で、野外調査、とくに地域住民への調査を開始する予定である。
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