研究課題/領域番号 |
20K12263
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
横田 樹広 東京都市大学, 環境学部, 准教授 (00416827)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 生態系サービス / シナジー / 水田 / 洪水適応 / 地産地消 / Eco-DRR |
研究実績の概要 |
2020年度は、以下の2点について実施した。 1. 対象地区(バンコク都ラックラバン区)におけるアンケート調査の実施・分析: 洪水調整と食糧供給、観光・レクリエーション機能との両立のための重要な社会・経済条件について把握するため、区内住民に対してインターネットアンケート調査を実施した。結果として計206の有効回答を取得し、これをもとに因子分析、共分散構造分析を行った。その結果、運河の機能として水位の観察や住民間交流、水田の機能として洪水調整のための貯水や水質浄化、景観維持といった機能について、水田保全意識との関係性が見られた。また、農地を活用したエコツーリズムの有効性に対する意識については、運河上の桟橋の修復・保全などの環境再生に関する意識、市場・レストラン等への開発ニーズ、運河沿い農地・果樹園等の活用への意識との関連性がみられた。分析結果については、Landscape and Urban Planning誌に投稿予定。 2. 住民のライフスタイルと水田保全・活用意識に関する分析: 区内住民を対象とした上記アンケートにおいて、運河へのアクセス性・利用頻度、日常の生鮮食品の購入手段とそこへのアクセス方法、身近なレクリエーション場所とそこでの行動、移動手段などについて別途把握し、水田保全意識との関連性を把握した。生産者から直接購入したり緑地で余暇を過ごす回答者は、水田や畑からの直接的な生態系サービスを高く評価した。一方で、運河・水際環境を多く利用する回答者は、商業・観光施設としての開発を通じてレクリエーション的利用を高めることによる文化的サービスへの意識が高かった。本分析結果は、国際会議Asian-Pacific Planning Society 2021にて発表予定(アブスト審査通過)、Urban and Regional Planning Review (URPR)に投稿予定。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウィルスの影響により予定していた現地調査が実施できなくなったが、代替手段としてインターネットアンケート調査によって対象地住民へのアンケート調査を実施し、目的とする生態系サービス評価のための社会条件の指標につながる重要な情報を得ることができた。これらの結果は、大会発表1件、国際会議1件(アブスト審査)において発表・投稿を行い、今後国際誌2件への投稿準備を開始している。今後もインターネットアンケート調査は有効な手段と考えられる。 一方で、調査方法の特性上、回答者の居住地の特定ができないことから、生態系サービスへの土地条件の影響については検討が不足している。社会条件と関連の深い土地条件を把握するため、居住形態に応じた土地利用の立地条件を空間的に分析する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルス禍での現地調査への影響を見極めつつ、調査の実施可能性について検討していく。また、代替手段としてのインターネットアンケート調査の継続利用の可能性についても、引き続き並行して検討していく。 空間的な分析に関しては、リモートセンシングデータの有効活用、現地の統計データの利用可能性について検討する。現地のカウンターパート(チュラロンコン大学ほか)の協力を得ながら、遠隔的に、現地行政担当者への統計情報の調査を行い、リモートセンシングデータと統合的に分析する方法について検討する。
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