研究課題/領域番号 |
20K12264
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
大橋 岳 中部大学, 人文学部, 講師 (40533592)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | チンパンジー / 西アフリカ / 石器使用 / 里山 / 保護区外 / リベリア / ギニア / 野生動物保全 |
研究実績の概要 |
本研究で対象とする2つの野生チンパンジーの集団(ギニア共和国ボッソウおよびリベリア共和国パラ)間で、彼らが捕獲した動物(ニシキノボリハイラックス)に対して異なる反応を示した事例について、日本霊長類学会大会にて報告した。ボッソウとパラは60キロメートルほどしか距離的には離れておらず、双方とも里山的な環境で植生も似ている。ボッソウとパラではアブラヤシの種子割り行動など同様の石器を用いた道具使用のレパートリーがみられるが、今回、同種の動物に対して異なる反応を示した。どの動物を食べ物とみなすか、過ごしてきた社会環境の違いが、彼らの採食レパートリーに影響したのかもしれない。ボッソウでは確認されていないパラにおける石器使用行動に関する分析については、エクアドルのキトにて2020年8月に開催される予定だった国際霊長類学会にて発表予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、2022年1月に延期されることになった。また、8月と2月に予定していた西アフリカでのフィールドワークについても、同様の理由から延期した。コロナ禍で海外の関係者との対面での会議はできなかったが、メールに加えて、オンラインでの会議を多く実施した。西アフリカのチンパンジーにみられる石器などの道具使用行動を最初の切り口として、国際自然保護連合(IUCN)にてチンパンジーの文化に関する作業部会が立ち上がり、絶滅が危惧されているニシチンパンジーの保全について欧米およびアフリカの関係者とZoom会議を重ねた。また、フィールドワークが実施できないなか、ギニアおよびリベリアの関係者とも連絡をとり、2021年度以降の現地の関係者のみによるチンパンジーやその生息環境のモニタリング実施の可能性について、議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
野生チンパンジーの行動に関するデータの分析は進めているが、西アフリカで実施予定だったフィールドワークは新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、すべて取りやめることとなった。また、海外での国際学会についても同様に来年度以降へと延期となった。そのため、使用予定だった経費の多くを翌年以降へと持ち越した。一方で、インターネット上での遠隔会議も一般化しつつあり、あらたな情報交換の場も形成されつつある。また、インターネット環境が整っていない西アフリカの関係者とも、モバイルのネット環境を介してコミュニケーションはとれている。
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今後の研究の推進方策 |
とくに、リベリア共和国パラにおける道具使用行動のデータについて分析を進める。コロナの状況をみつつ、西アフリカにおけるフィールドワークや海外での国際学会への出席を模索する。Zoomなどを用いたオンラインにおける遠隔会議を利用しながら、海外に出張できないなかでの現地国の研究協力者による野生チンパンジーの生態学的データ収集、森林における違法な狩猟や伐採を最小限に食い止めるためのモニタリングなどの可能性を探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
西アフリカで実施予定だったフィールドワークは新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、すべて取りやめることとなった。また、海外での国際学会についても同様に来年度以降へと延期となった。そのため、使用予定だった経費の多くを翌年以降へと持ち越した。コロナの状況を丁寧にみつつ、次年度以降のフィールドワークおよび海外での国際学会発表にこの経費を充てたい。
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