研究課題
リベリア共和国パラの森林における野生チンパンジーの石器を用いた板根叩きに関連して、板根190本のGPSによる位置情報、樹木の胸高直径、板根への投石による傷の有無、チンパンジーが使用したと思われる石のそれぞれの重さ、樹木のロケーションの分析をおこなった。190本中39本(平坦25本、斜面14本)には石を当てた痕跡がなかった。遊動域内であっても、その板根を利用するかしないか、好みも存在するだろう。遊動域を外れている可能性がある。今後のデータの蓄積で遊動域の推定に利用できる可能性がある。134本には根元に石があり、その合計は1398個あり、平均3.62kg、中央値3.0kg、最小値0.1kg、最大値16.3kgだった。胸高直径の大きさと石の数には相関があった。板根に傷があるにもかかわらず、根元に石がない木が平坦地で66本中8本、斜面で85本中9本あった。石の不安定さから斜面で石の数が少ない可能性が考えられたが有意差はなかった。パラのチンパンジーはナッツ割りにも石を利用する。平坦地で石がなかったところでは、チンパンジーがあらためて別の場所へ石を運んだ可能性が考えられる。上記の内容は2022年1月にエクアドルで開催された国際霊長類学会大会でオンライン参加により発表した。あらたなデータ収集のため、2021年8月、および2022年2月にリベリアにおける野外調査を計画していたが、新型コロナウイルス感染防止の観点から実施することができなかった。国際自然保護連合における野生チンパンジーの文化に関する作業部会のメンバーとして、欧米アフリカの関係者とオンラインでのやりとりを継続した。野生チンパンジーの保全に関して意見を集約し、論文を共著で発表した。
3: やや遅れている
野生チンパンジーの行動に関するデータの分析は進めているが、本年も2021年8月および2022年2月に実施予定だったアフリカにおけるフィールドワークを、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点からすべて取りやめることになった。しかしインターネット上での遠隔会議も一般化しつつあり、あらたな情報交換の場も形成されている。西アフリカにおいてはインターネット環境が十分ではないが、モバイルのネット環境を通じて、コミュニケーションはとれている。
リベリア共和国パラにおける道具使用行動についてデータ分析を進めるとともに、コロナの状況をみつつ、西アフリカにおけるフィールドワークを実施する。海外へ出張できない期間においても、現地国の研究協力者と連絡を密にし、生態学的なデータの収集や森林における違法な狩猟や伐採を最小限に食い止めるためのモニタリングなどの可能性を探る。
西アフリカで実施予定だったフィールドワークが新型コロナウイルス感染拡大防止の観点からすべて取りやめることになった。また、海外での国際学会についてもオンラインのよる参加に切り替えた。そのため、使用予定だった経費の多くを翌年へと持ち越した。コロナの状況を丁寧にみつつ、次年度のフィールドワークにこの経費を充てたい。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
Conservation Letters
巻: 15 ページ: e12860
10.1111/conl.12860