研究課題/領域番号 |
20K12265
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研究機関 | 阿南工業高等専門学校 |
研究代表者 |
福見 淳二 阿南工業高等専門学校, 創造技術工学科, 准教授 (30300627)
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研究分担者 |
杉野 隆三郎 阿南工業高等専門学校, 創造技術工学科, 教授 (10259822)
福田 耕治 阿南工業高等専門学校, 創造技術工学科, 教授 (40208955)
中西 達也 徳島県立農林水産総合技術支援センター(試験研究部), 徳島県立農林水産総合技術支援センター(水産研究課), 研究員 (40521729) [辞退]
吉見 圭一郎 徳島県立農林水産総合技術支援センター(試験研究部), 徳島県立農林水産総合技術支援センター(水産研究課), 研究員(統括・上席) (50636040)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 360°カメラ / マルチスペクトルカメラ / 藻場モデル水槽 / 単眼深度推定モデル |
研究実績の概要 |
本年度は、水槽内の魚類などの行動計測システムとして、360°カメラと単眼深度推定モデルMiDaSを組み合わせたシステムを構築し、位置推定精度の検証や実際のモデル水槽において魚類の位置推定実験を実施した。提案システムでは、360°カメラを用いて撮影した水中画像を歪みの少ないキューブマップに変換し、Tensorflowを用いて魚類を抽出するとともに、カメラからの距離を単眼深度推定モデルMiDaSを用いて推定し、水槽内の三次元位置を推定する。徳島県水産研に準備した実際の水槽に構築したシステムを設置し実験を行った。キジハタに対する位置推定実験の結果より、同時に3匹の検出および移動軌跡の計測が実現できた。単眼深度推定モデルの精度も検証した結果、水槽内の魚類行動の計測精度としては、十分な精度が得られていることが確認できた。しかしながら、海藻の陰に隠れてカメラの死角になったり、魚影が重なった際には、計測値が欠損してしまう場合も見られ、今後はデータ欠損に対する対処方法の検討が必要となる。 また、海藻の生育状況を計測するため、マルチスペクトルカメラを使用した手法の検討及び実際の水槽や藻場での撮影実験を実施した。今回使用したNDVI(正規化植生指数)は農場での植生分布のリモートセンシングなどに実績のある方法であり、海藻類に関しても適用可能であることが確認できた。しかしながら、水面下の海藻に関しては検出が困難である。そこで、水域の抽出に利用されているNDWI(正規化水指数)を組み合わせることで、水域と岩場などの水域外を別々に解析する手法を提案し、水槽や海岸での撮影実験を実施した。その結果、NDVIとNDWIを組み合わせることで、沿岸部における海藻の推定手法開発の可能性が確認できた。今後は、実際の水槽や藻場での検証を進め、精度の向上や手法の改良を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度の前半はコロナ禍による移動制限等の影響および海藻の生育状況の不良等が重なり、想定した実験が実施できなかった。そこで、魚類の行動計測手法の改良と精度向上を主に基礎実験を実施し、適用可能な手法の検証は予定通り進んでいる。しかしながら、実際の水槽での植食動物の行動データの取得が不足しており、令和3年度年度に予定していた行動モデル生成の実現には至っていない。そのため、現在行動モデルの生成手法についての検討は進めており、実験データが揃い次第行動モデルの生成および実験との比較検証を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現在、複数の比較実験を同時に実施できる藻場モデル環境を徳島県水産研に整備するため準備を進めている。このモデル水槽を用いて、まず半日程度の魚類の行動データの取得および解析を実施する予定である。その後、行動データを蓄積するとともに、マルチエージェントシステムを用いた行動モデルを生成し、モデルの改良を実施する。その後、イセエビなどの多様な植食動物に対しての行動モデルを生成し、藻場全体の複雑系モデルを構築する予定である。 行動データの取得には、長期に渡る実験が必要となり、水槽で飼育する魚類などの都合でデータ取得が中断する可能性もある。モデル生成に必要なデータが十分取得できない場合も想定し、徳島県水産研の魚類や生態系の専門家に依頼し、植食動物の行動に関する知見等を提供していただき、モデル生成に利用することも同時に実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度は、コロナ禍により国内学会をはじめ国際会議がオンラインでの開催となり、出張旅費を使用する機会が研究代表者、研究分担者ともほとんどなかった。また、県境をまたいだ情報収集等の機会も制限されたことから、これらの使用額が次年度に繰り越されることとなった。 令和4年度は、移動制限も緩和されたことから国内学会および国際会議も対面での実施が予定されており、これらの学会への出張費用として使用する予定である。また、数か月にわたるデータ収集を予定しており、実験補助の人件費の使用額も当初の予定より増加する見込みである。
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