研究課題/領域番号 |
20K12266
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
塩寺 さとみ 南山大学, 国際教養学部, 准教授 (60621117)
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研究分担者 |
伊藤 雅之 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (70456820)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 熱帯泥炭湿地林 / 熱帯ヒース林 / 環境要因 / 人為的撹乱 / 泥炭火災 |
研究実績の概要 |
東南アジア最大の熱帯泥炭地保有国であるインドネシアにおいては、1970年代の大規模農地開発を皮切りに現在まで泥炭地の劣化や減少が続いており、これが泥炭の分解や泥炭火災による大気中へのCO2放出など地球規模の環境問題へと発展している。本来、熱帯泥炭地には泥炭湿地林が発達しており、周辺の熱帯林が開発される中で最後の砦となって生物多様性を維持してきたが、その機能も徐々に失われつつある。このため、泥炭湿地林の保全や回復が急務であるが、この湿地林生態系の成立要因や維持機構および物質循環については未知のままであり、対応策が立てられない状況にある。 そこで本研究では、これまでの研究成果を発展させ、自然状態にある泥炭湿地林と隣接したヒース林において、①樹木種の多様性や群集構造、炭素固定能力といった森林機能、②土壌・水環境に対応した樹木の形質と栄養塩・水利用特性を解明し、③低栄養塩環境下における湿地林生態系の維持機構や物質循環を明らかにする。さらに、人為的な影響を強く被っている④攪乱泥炭地と比較することにより、攪乱による泥炭湿地林およびヒース林の影響評価を行う。 これまで、中部カリマンタン州の泥炭湿地林~ヒース林移行帯において、樹木種の多様性や群集構造、および土壌・水文環境との関係性についての野外調査を行うとともに、長年に渡る泥炭湿地林の劣化と減少にともなう周辺村落における生活の変化に関する村落調査を行ってきた。これまでの調査で採取した土壌サンプルの分析結果について検討したところ、さらなる分析を行う必要性が生じたため、再度分析を行っているところである。数か月中には分析結果が出る予定であるため、その結果も踏まえて解析を進める予定である。来年度は数回程度のインドネシアへの渡航と現地調査を予定しており、研究の完成に向けてさらなるデータの蓄積を行っていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、3月に一度、現地を訪問することができた。これまで取得したデータについて議論を重ねた結果、土壌サンプルに関してさらに分析を進める必要があると考え、先方に分析を依頼した。これについては数か月中に結果を取得できる予定であり、これを踏まえて論文作成を行いたいと考えている。また、来年度は数回程度のインドネシア渡航を予定しており、コロナ禍で滞っていた追加の村落調査についても再開できる見通しであるため、今後は順調に研究を進めることができると予想される。
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今後の研究の推進方策 |
これまで入手したデータをもとに解析を進めた結果、採取済みのサンプルについての追加試験を行うこととなった。また、インドネシア渡航が通常通りに可能となったため、今後、複数回の現地調査を予定している。この結果を含めて論文の作成を行っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はCOVID-19の影響を考慮しつつインドネシアへの渡航を計画していたが、先方との調整もあり、3月末に一度のみ渡航を果たすことができた。このため、次年度への繰り越しが生じた。次年度は通常通りに海外渡航、および現地調査を行うことができると考えられるため、数回程度のインドネシア渡航と現地調査を予定している。
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