研究課題/領域番号 |
20K12267
|
研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
横溝 裕行 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境リスク・健康研究センター, 主任研究員 (30550074)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 最適管理 / 大型哺乳類 / 捕獲努力 / 情報の価値 / 個体数推定 / シミュレテッド・アニーリング |
研究実績の概要 |
日本各地で大型哺乳類が増加しており、その個体数管理が重要な課題となっている。しかし、広域を対象とした事業においては、個体数などについて、常に限られた知見に基づいて最善と考えられる対策を選ぶ必要がある。大型哺乳類の個体数管理事業の多くにおいて、捕獲は個体数を減少させるための手段としてだけではなく、個体数を推定するためのデータでもあるため、個体数推定値の精度を高める役割も担っている。個体数の期待値を最小化するために、個体数や個体群パラメータの不確実性の大きさに応じて捕獲努力の最適配置を導出する数理モデルを構築した。 まず、千葉県の2018年度までの狩猟統計データを用いて推定した個体数から、個体数の不確実性の大きさの定量化を行った。捕獲による個体数に関する不確実性の低減効果がないと仮定した場合に、個体数を最小化するための捕獲努力の最適な空間配分をシミュレーテッド・アニーリング法により導出した。次に捕獲や自動撮影カメラによる個体数の不確実性の低減効果を仮定した場合の最適な空間配分をシミュレーテッド・アニーリング法を用いて求めた。捕獲努力と自動撮影カメラの設置場所に対する将来の個体数の期待値を求めるための数理・統計モデルを構築した。次年度以降、このモデルを基に情報の価値分析を行い、捕獲の直接的な効果(生息数低減)と間接的な効果(精度の高い個体数推定値等を得ること)の両方を考慮した捕獲努力の最適配分を導出する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
不確実性の程度に応じた捕獲努力の最適な空間配分をシミュレーテッド・アニーリング法により導出する数理・統計モデルを、予定通りに構築することができた。このモデルを基に情報の価値分析を行うことを予定している。本研究で用いる個体数推定値を求めるための論文を共同研究者とともに執筆を行っており、本研究課題は概ね順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
自動撮影カメラの設置など情報を得るためにはコストを伴う。情報の価値(個体数の低減効果)と情報を得るためのコストを比較し、個体数を1頭低減するためにかけられるコストを設定することにより、最適な情報を得るための捕獲罠と自動撮影カメラの設置場所や数などを求める。 千葉県のイノシシ管理以外の、野外生物管理に応用するためにモデルの一般化を行う。情報の価値分析により、正確な情報を得ることの価値を定量化することで、不確実性をどの程度小さくすることが個体数管理において重要なのかを示すための一般理論を構築する。他種・他地域への適用や、農業被害と個体数・環境要因(農地面積など)の関係などの個体数以外の不確実性を減らすための情報の価値を求める予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の流行が原因で、予定していた学会参加などが取りやめになったために次年度使用額が生じた。流行状況に応じて、学会に参加することにより研究成果を発表する。また、執筆した論文を積極的にオープンアクセス化を行う予定である。
|