研究課題/領域番号 |
20K12270
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
久保田 健 弘前大学, 地域戦略研究所, 准教授 (70400405)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 垂直軸風車 / 風力エネルギー / トルク係数 / パワー係数 |
研究実績の概要 |
帆布を翼材とする8枚翼の抗力型垂直軸風車の性能向上研究として、翼仕様の変化に伴う空力性能の変化を数値流体計算による流れの可視化によって検討するとともに、屋外における自然風下でのシステム実証実験で風車性能の計測を行った。 具体的には、垂直軸風車の受風時に流入風で順回転方向の動圧を受けるアジマス角度帯で翼の凹面化を逆回転方向の動圧を受ける角度帯で翼の凸面化をさせた時の風車の空力性能について2次元の数値流体解析を行い、速度場や圧力場、渦度の時間的・空間的変化について形状をパラメータとして検討するとともに、計算時で得られる抗力係数やパワー係数を系統的に分析した。また、帆布の弛み量によって変化する翼の接弦方向力、すなわち回転力について、モーメントの観点から機構学的に検討した。さらに、風車スパン方向の長さ調整で帆布翼の弛み量を調整する以外に、典型仕様では直線であった翼長方向も形状を変更することを試行し、ベイズ最適化手法によって、翼長、翼角度、翼内端折れ角、翼外端折れ角、折れ翼長を調査し、風車の出力性能はさらに向上させられる可能性を見出した。 実証実験においては、海中送気ポンプを駆動するための動力として本風車を組み込んだ風力エネルギー直動式送気ポンプシステムを作製し、短期間の実証試験を通じて低速風下での動作確認を行うとともに、得られた結果を論文としてまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年前に策定した2年度目の研究計画の柱の1つである「流れ場の可視化」については、主にANSYS-FluentやOpenFOAMを用いた数値流体解析によって約150ケースの計算を実行し、基本形状風車で実験と計算のおおよその合致、ならびに派生アレンジケースにおける傾向的な結果が得られるに至っている。またもう1つの柱である実験装置の改良、すなわち「簡易風洞の大型化と風の安定度向上」については、令和3年度内に目標仕様の改良を完了しており、これに3Dプリンターや板金加工で製作した小型模型風車を供しての空力特性計測実験によって、派生アレンジケースに対する数値流体解析の結果と定性的には合致することを確認している。なお、風洞の大きさに律速される風車の寸法、ならびにこれと設定風速の2つにて一意的に決定されるレイノルズ数は、最大でも30,000程度であって、実証試験を含めた実際の現象が50,000~120,000であることからデータの取り扱い慎重を期し、シミュレーションで補完している。また、可視化実験については、現在の学内保有設備では消防法の制約によってスモーク法による実験での流れの可視化が出来ないことから、試行的にタフト法を検証している。
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今後の研究の推進方策 |
2年目に実施した帆布翼の垂直軸風車における翼仕様アレンジ実験、ならびに数値流体解析の結果に基づき、最終年度となる3年目は以下について実施する。 ・回転する風車の一部として翼が風を受ける際の相対風速変化と周辺流れ場を着目点として、変形翼単体および多翼風車として風を受けた時に生じる抗力と揚力の風向角依存性について実験、計算の両側面から系統的な解析を通じて座標的性能把握を行い、さらに流れの剥離を調査するため時間的なデータの把握も加えた多面的な調査を実施する。 ・垂直軸風車の帆布翼が変形することで生じる空力的な作用点の変化に着目した、翼の取付位置と取付角度の最適化研究をさらに進めるとともに、性能向上とともに形状の複雑化が進展する翼形状について、社会実装を目標とした形状の簡素化について検討する。 ・得られたデータならびに蓄積したデータの解析を通じ、風車翼形状と空力性能の関係について定式化を図るとともに、実証実験に用いる寸法の風車を風洞試験に供し、まとめた知見の再確認を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究2年目においても初年度と同様にコロナ蔓延の状況は継続した。2年度開始時期よりこの状況は想定しており、初年度の繰越額と合わせて研究室保有の測定装置(簡易風洞)の性能向上と大型化、および研究推進のための実験消耗品等に利用したものの、期末に計画していた出張しての学会参加が出来なかったことにより、結果として31,253円の繰越が生じた。 この繰越額と最終年度分として請求した助成金を合わせた使用計画については、当該年度もコロナ禍の影響を受けて出張回数は当初想定よりも減じることになると想定して、実験用消耗品の調達、ならびに実験とデータ解析の迅速化のための学生謝金、さらには研究成果をまとめた論文の投稿料として使用する予定である。
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