最終年度は風洞実験によるデータ取得と対応したシミュレーション計算(CFD)を行い20%ほどの性能向上、ならびに3次元形状である風車実機を2次元CFDで解析することによる風洞実験結果とCFD結果の乖離についての補正に関する再解析処理方法の構築検討を実施した。 帆布が柔らかいことを利用して風車の翼を風車スパン方向に意図的に5%程度弛ませた仕様とすることで、翼が受風する際の風向に対応した凹面となるため回転力は増強し風車の回転トルクは高まるが、逆回転方向のモーメントを発生するアジマス角度帯でも同様の効果が発現するため回転力の相殺が起きており、風車翼の形状を最適化することが最終目的であった。 翼形状を制御する骨格構造を探査するためにCFD解析で流れの可視化を行ったところ、逆回転力に寄与する翼から2次的に発生するウェイクのうち、風車内への流入風は噴流を形成して流れの後方位置にある翼に順回転方向の力として作用していることを確認した。ここから、逆回転力を発生するアジマス角度帯で抗力を低減させつつ風車内部に噴流を取り込む翼形状の制御を検討、2次元CFD解析値では最大30%程度の風車性能の向上が予測された。実験では、CFDと全く同一の翼制御には至らなかったものの、類似する翼形や基本形状、中間的形状についてデータを取得し、翼型変更による流れの制御によってパワー係数は0.0397から0.0479へと20%向上することを確認した。 他方、本風車は高いソリディティ値を有する特徴し、これに起因して2次元CFDの出力予測値は低ソリディティの揚力型風車の場合と異なり約3倍と過剰に見積もられる傾向がありCFDによる風車仕様を検討する上で致命的疎外要因であったが、再解析による流れ場補正を取り込んだ結果、再解析値は実験値と比して±20%となり、本風車用のCFDスキームを構築できた。
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