研究実績の概要 |
電気二重層吸着の原理を用いた希薄溶液中のイオン除去において、電極材のメソ孔性マリモナノカーボンの合成に用いる触媒調製について、昨年度の成果より酸化ダイヤモンド担体に担持するNiの担持量を5~15wt%で変えて合成することで細孔特性を制御できることがわかった。本年度は、加えて最も大きな細孔容積を持つことがわかった。本年度は、従来用いられているマイクロ孔性の電極材料では、希薄溶液中では細孔内で電気二重層(EDL)のうちの拡散層が重複することにより、良好なEDLが形成されず、希薄なアニオンの脱離が困難になることが報告されているため、希薄アニオンの吸脱着性能の評価を行った。Ni担持量15wt%で合成したマリモナノカーボンMNC-15は、平均細孔径20nmのメソ孔を多く持つ材料で、これを用いて1mMの希薄NaF, NaCl, Na2SO4, Na3PO4 水溶液を用いてイオンの吸脱着測定を行った。CV測定を行い、得られた曲線は、対称的な長方形の曲線が得られ、理想的なEDLが形成される場合に観測される結果が得られた。一方、比較試料であるマイクロ孔性材料では、アニオンの脱着が困難であり、対称的な長方形の曲線が得られず、良好なEDLが形成しなかった。 また、連続して希薄イオンの除去を行うため、流通法を用いて希薄Csイオン・Srイオンの除去を行ったところ、マイクロ孔性材料では吸着したイオンの脱離が行われず、一方、MNC-15では希薄イオンの吸脱着がスムーズに行われ、流通法でも有効性が示された。 これらの結果より、MNC-15は希薄溶液中で拡散層が重複しない良好なEDLを形成し、希薄アニオンの吸脱着性能の向上に寄与することが確認できた。
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