研究実績の概要 |
従来の水処理法である物理吸着、イオン交換、膜分離、凝集沈殿法などでは除去が困難な希薄な各種イオンを、電気二重層吸着の原理を適応した省エネルギーかつ低環境負荷の新しいプロセスで水質の環境改善を目指した。 CCVD法によりメソ孔性マリモナノカーボンを合成し、このメソ孔性炭素電極を用いたイオン除去性能を評価するため、希薄な1.0 mM CsCl,SrCl2水溶液を用いてCV測定を行った。得られたCV曲線から希薄なイオン濃度においても左右対称なCV曲線が得られ、理想的な電気二重層(EDL)が形成されていることが確認され、希薄イオン除去に適していることがわかった。一方、市販のマイクロ孔性の活性炭シートではCV曲線の形が崩れており、良好なEDLが形成されていないことがわかった。このことから、一般的に希薄水では拡散二重層が厚くなり細孔内でEDLが形成しにくくなるが、大きなメソ孔内では理想的なEDLが形成されたと考えられる. 電気二重層の原理では、従来イオンの選択除去が困難と考えられているイオンの選択的かつ高度除去を行うため、陽イオンのイオン移動度の差及びクーロン力に着目した選択的吸着を試みた。1価イオン同士で移動度及びクーロン力に差があるCs+とLi+に注目した。電極材料に活性炭繊維布を使用して、イオン移動度の差が大きい場合、吸着時間を制御することで選択的吸着できると考え、電圧1.0Vで30min吸着した実験を行った. 吸着時間15 minで行った際の除去率の差は約7.0%であったが、吸着時間を10 minにして行うと吸着率の差は10.8%となった。差が生じた理由として, イオン移動度の違いが考えられる。吸着初期では移動度の大きいCs+が電極表面に速く吸着することで除去率が高くなった。イオン移動度の差によって選択的吸着が可能であることが示唆された。
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