研究課題/領域番号 |
20K12278
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
甲斐田 直子 筑波大学, システム情報系, 准教授 (60456704)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 気候変動緩和行動 / 環境配慮行動 / 心理的障壁 / 質問紙調査 |
研究実績の概要 |
本研究は、「気候変動緩和行動に対する心理的障壁に世界共通の構造は存在するか」「心理的障壁は軽減できるか」の問いに対して、日本と中国を対象に、(1) トークニズム(形式だけの行為)や他者関係などの心理的障壁(意図から行動までの間に乖離を生む心理)の構造を解明すること、(2) 固有の文化背景に裏打ちされた心理的障壁軽減方策を設計して効果を検証することを目的とする。本研究は、心理的障壁という環境配慮行動・環境心理学研究における新しい視点に文化固有性をいち早く反映させて、その構造関係を明らかにする。消費者が気候変動緩和行動に至るまでの心理的「あと一歩」をピンポイントにつなげることで、より効果的な気候変動対策の推進への貢献を目指す。本研究は、日本と中国を対象に、まず心理的障壁の構造を明らかにするための質問紙調査を行い、そして障壁軽減策の効果を検証するための行動選択実験を実施する。 1年目(令和2年度)は、気候変動緩和行動における心理的障壁日中比較調査を実施した。省エネ、交通、廃棄物、食品選択、政策支持など、気候変動緩和行動意図および実践を含めた詳細な質問紙調査を、日本(関東首都圏)と中国(上海市、西安市)において行った。親子関係が気候変更問題に関する行動と心理的障壁に与える影響を検討するため、調査対象者は、成人男女に加えて一部の回答者についてその子(10代)も含めた。この調査により、気候変動に対する問題認識、環境共存観などの価値観、個人・集団主義、社会変革志向、心理的障壁、親子関係、環境配慮行動意図・行動データを取得した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、日本と中国を対象に、まず心理的障壁の構造を明らかにするための質問紙調査を行い、そして障壁軽減策の効果を検証するための行動選択実験を実施する。1年目(令和2年度)は、気候変動緩和行動における心理的障壁日中比較調査を実施した。省エネ、交通、廃棄物、食品選択、政策支持など、気候変動緩和行動意図および実践を含めた詳細な質問紙調査を、日本(関東首都圏)と中国(上海市、西安市)において行った。親子関係が気候変更問題に関する行動と心理的障壁に与える影響を検討するため、調査対象者は、成人男女に加えて一部の回答者についてその子(10代)も含めた。この調査により、気候変動に対する問題認識、環境共存観などの価値観、個人・集団主義、社会変革志向、心理的障壁、親子関係、環境配慮行動意図・行動データを取得した。 日本調査データの相関分析等の結果、親子間の結びつきが強い親子と子の決定権が大きい子で、親も子から気候変動緩和行動の影響を受けていることが示唆された。また、親子ともに気候変動緩和行動において有意に働いた心理的障壁は「変化の不必要性」であり、家族における子の数が多いほど気候変動緩和行動を行っていることが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
2年目(令和3年度)以降は、心理的障壁軽減策の短長期的効果検証を日中比較実験・調査により行う。まず、前年度調査により取得した日中調査データの詳細な分析を行い、気候変動緩和行動における心理的障壁の両国における特徴を明らかにする。分析の結果確認される顕著な心理的障壁に着目して、6種程度の障壁軽減方策を設計する。障壁以外を統制できる実験室環境において、画像・情報提示による介入方策を実験的に遂行し、行動選択回答および行動観察によって障壁軽減効果を検証する。第3年度は、障壁軽減方策の短長期的効果を検証するために2時点質問紙調査を実施する。文化固有・共通方策の効果を比較検証するために、令和3年度の実験において日中それぞれ最も大きな効果が認められた方策と、日中共通して一定の効果が認められた方策の2種に絞り込み、質問紙上で介入可能な形式の方策に落とし込む。第1次調査において情報提供介入と直後の障壁軽減効果を検証し、3ヶ月後に行う第2次調査で長期的効果を検証する。 以上の成果を取りまとめて、日本・中国それぞれの文化固有性にもとづいた有効な心理的障壁軽減策を提案する。
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