研究実績の概要 |
本研究は、「気候変動緩和行動に対する心理的障壁に世界共通の構造は存在するか」「心理的障壁は軽減できるか」の問いに対して、日本と中国を対象に、(1) トークニズム(形式だけの行為)や他者関係などの心理的障壁(意図から行動までの間に乖離を生む心理)の構造を解明すること、(2) 固有の文化背景に裏打ちされた心理的障壁軽減方策を設計して効果を検証することを目的とした。 1年目は、気候変動緩和行動における心理的障壁日中比較調査を実施した。省エネ、交通、廃棄物、食品選択、政策支持など、気候変動緩和行動意図および実践を含めた詳細な質問紙調査を、日本(関東首都圏)と中国(上海市、西安市)在住の親子を対象に行った。2年目は、1年目に取得した日中調査データの詳細な分析を行った。日中双方のデータセットにおいて、気候変動行動心理的障壁尺度(Lacroix et al., 2019)の妥当性が確認された。また、心理的障壁と気候変動緩和行動には負の相関関係が認められた。家庭単位で行われる気候変動緩和行動において、中国では日本よりも子の意向が強く働くことが確認された。また、親子間の心理的障壁は、中国では相互の行動に影響するが、日本ではそうではない可能性が示された。最終年度は、気候変動緩和行動変容における心理的障壁緩和方策とその効果を検証した。オンライン調査の結果、中国では機能や利便性の経験が、日本では対人関係を意識させると行動変容の可能性が高まることが示唆された。
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