研究課題/領域番号 |
20K12280
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
古澤 慎一 新潟大学, 自然科学系, 助教 (40588315)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 社会的企業 / イノベーション / 認知革新 / 組織学習 / 中間支援組織 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、農業・食料システムにおける社会的企業のイノベーションの創出メカニズムとその影響を明らかにすることである。 まず、「課題I. 社会経済条件の量的分析」については、国内の食品製造業の上場企業を主な対象として、経営戦略と認知革新の実態を把握する研究を進めた。Kiminami and Furuzawa(2015)の企業の認知的革新モデルを援用し、まずは新潟県内の食料品製造業の上場企業の有価証券報告書に対して経営パフォーマンスの分析及びテキストマイニング(共起ネットワーク分析)を導入し、予備的分析を行った。その結果、有価証券報告書のテキストデータを用いた共起ネットワークの分析結果からは、2010年以降に一部の企業では組織学習を通じて知識構造の変化と認知的革新を実現し、経営パフォーマンスを高めていることが示唆された。また、国内全体の食料品製造業の上場企業データの収集・整理を進めるとともに、企業価値評価とESG投資の視点を加えた分析の準備を進めた。 次に、「課題Ⅱ.社会的企業のイノベーションの質的分析」については、新潟県と愛知県を対象に、社会的企業の組織間ネットワークの分析を通じて、社会的イノベーションのメカニズムを分析した。具体的には、社会的企業の組織間ネットワークに関する共分散構造分析を通じて、 社会的企業の組織属性や事業領域がネットワークの形成内容に影響を及ぼし(仮説1)、 多様性かつ協働型のネットワーク形成が関連主体との共感や社会的企業との連携を促している(仮説2)ことを明らかにした。さらに、両地域における中間支援組織のケーススタディを通じて、社会的起業および社会的企業の組織間ネットワークの構造・機能に影響を及ぼし、社会的イノベーションの誘発を促進している(仮説3)ことを明らかにした。以上の成果を踏まえつつ、先端的な事例の資料収集を行いつつ、質的分析の準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナ感染拡大防止のために、現地調査を断念したが、研究計画の一部見直しを行ったため、全体として研究は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
①持続可能な生産・消費行動に関する消費者の認知・行動のアンケート調査を行い、需要条件の分析を行う。 ②オルタナティブ市場をめぐる制度・政策環境の実態に関する調査と資料分析を行う。 ③先端的事例の資料収集・分析を引き続き行い、その類型化・ビジネスモデルの整理を通じて、社会的企業のイノベーション誘発行動のモデル化を行う。 ④予備的分析結果を踏まえつつ、食料品製造業の上場企業を対象とした認知革新とイノベーションの分析を行う。 ⑤研究成果の積極的な発信を行う(日本語・英語)。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染拡大防止のために、実態調査の実施を見送ったこと、それにより研究計画の一部を見直ししため、次年度使用額が発生した。2021年度は、社会経済情勢の状況を見て、柔軟に計画を見直して、実態調査を実施する。
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