研究課題/領域番号 |
20K12281
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
喜多川 進 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (00313784)
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研究分担者 |
伊藤 康 千葉商科大学, 人間社会学部, 教授 (10262388)
辛島 理人 神戸大学, 国際文化学研究科, 准教授 (20633704)
友澤 悠季 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 准教授 (50723681)
小堀 聡 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (90456583)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 環境政策史 / 経済成長 / 環境政策 / 地球環境政策 / 公害 / 環境保全 |
研究実績の概要 |
環境政策の制度化以来のこの50年は,成長させるべき「経済」と守るべき「環境」の攻防の歴史であったとの認識に立ち,今年度は経済成長と環境政策の関係性を検討した。その結果,環境政策と経済成長の関係性について,対立期(1950-1980年),両立模索期(1980年代),両立期(1990-2015年),グリーン経済成長戦略期(2015年-現在)という4つの時期区分を設定することができた。各時期の概要は次の通りである。対立期には,環境政策は経済成長にとって悪影響を及ぼすといった議論がなされていた。続く両立模索期には,OECDや国連関係の機関において環境政策と経済成長の両立可能性が議論されるようになり,その議論の影響は日本にも及んだと考えられる。そして,1990年代には1992年のリオ・サミット(国連環境開発会議)を画期として,環境政策と経済成長は両立できるという理解が,日本を含む先進国の首脳や産業界の間で広まっていった。さらに,EU(欧州連合)は2015年頃から「グリーン経済成長戦略期」に入っており,日本も「グリーン経済成長戦略期」への移行を試みているところである。趨勢としては1980年代から「環境政策の成長戦略化」が徐々に進展しており,「グリーン経済成長戦略期」において「環境政策の成長戦略化」が大きく加速しているといえる。 また,潜在化し被害が長期化している日本の公害に関する分析をおこなうとともに,「人新世」「大加速(great acceleration)」等の概念やエコロジカル・フットプリントの視点から地球レベル及び地域レベルでの「環境」と「経済」の対立の歴史についてもあわせて考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍の影響により海外出張は制限されたが,5名の研究参加者は国内調査,資料収集と分析をおこない,それらにもとづく研究報告および論文執筆を進めた。具体的には,環境政策と経済成長の関係性に関する時期区分をおこない,それに基づいいて各時期の考察を進めた。また,編著書籍の刊行や学術書の分担執筆,招待講演などもおこなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,事例研究をさらに進めるとともに,資料の収集も継続して実施する。それとともに,これまでの研究期間における成果と収集した史資料や文献に基づき論文執筆や口頭発表等をおこない,研究全体のとりまとめをおこなう。そして,この50年間の日本の環境政策における,経済政策,産業政策,開発政策等の諸政策と環境保全の対立と共存の実態を立体的に考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響があり,出張回数が当初予定よりも少なくなった。2024年4月時点ではコロナ禍は落ち着いているため,今年度は自粛していた出張もおこなう予定である。
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