研究課題/領域番号 |
20K12284
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
太田 貴大 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 准教授 (30706619)
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研究分担者 |
児島 利治 岐阜大学, 流域圏科学研究センター, 准教授 (90346057)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 河川流量 / 遠景景観 / 絶滅危惧種 / 個体数推定 / 混交林化 / ピーク流量 / ボードゲーム / 森林所有者 |
研究実績の概要 |
本年度は、長崎県郡川流域にて実施する意識調査の準備を実施した。意識調査内で提示する各生態系サービスの過去と現在の推定値を算出するため、データ収集および分析を引き続き実施した。データは、おもに、現地の県庁や市役所、森林組合や国の森林管理署からいただいた。データ収集において、過去の時点(森林環境税が始まった15年程度前)のデータを収集するのが困難であり、引き続き収集を実施する。また、意識調査内で提示する生態系サービスの単位を決定することも実施した。この中で、水関連の調整サービスについては、豪雨時のピーク流量および1戸あたりの使用可能水量(割り当て水量)を使用することとしたが、得られるデータにより、さらに適した単位がありうることに留意が必要である。生物多様性の維持の指標には、複数の鳥種の個体数を用いることとした。この個体数推定モデルの現地への当てはめについては、学会大会でポスター発表を行った。どの種を選定して情報を提示するかについては、絶滅危惧種を中心として、森林の状態変化にともなう個体数の変化が大きな種を選択することとした。また、これまでの生態系サービスのモデリングの考え方や、本研究の過程で明らかとなってきた上流の森林所有者と下流の一般住民の間での交流の重要性を踏まえて、過去に作成したボードゲームの分析を実施した。このような参加の形も、政策改善のための参加の一つの形になりうることを議論した。これらに関する内容を、査読付き論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度にコロナのため、現地でのデータ収集が実施不可能となり、1年度分の計画が遅れている。この対策として、研究対象の地域を長崎県郡川流域に変更し、県内移動のみでデータ収集や現地のステークホルダーとの連携を取れるようにした。最終年度に実施予定である、流域全体を対象とした、生態系サービスの変化に関する数値情報を提示した意識調査の準備はおおむね順調に進んでいるものの、一部過去のデータが不足しており、質問票の最終版の作成が予定より遅れている。意識調査を実施する町内会とは良好な関係を維持しており、質問票が準備でき次第、すぐに調査が開始できる体制を整備済みである。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は最終年度である。最終年度は、長崎県郡川流域を対象に、生態系サービスの過去および現在の数値を提示したアンケートを実施する。仮説である、これらの情報が提示されることで、政策参画の意図が高まることを、検証する。政策参画意図を測定する質問群を検討・決定し、プレテスト・本調査を実施する。また、アンケートの回収においては、現地のステークホルダーである町内会の方々に依頼をし、回収率が低い場合は、現地にて会合などを開催して回収に努める予定である。データが得られた後は、生態系サービスの情報を提示したグループと提示していないグループとでどのような違いがあるかを比較する。以上の内容について、国際誌への論文投稿を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度のコロナ時に実施できなかった計画を順次実施しているため、残額が生じている。 翌年度分として請求した助成金はなく、最終年度となる2023年度は、全額を使用する。 使用計画としては、郡川流域にて4つの町内会を対象に、郵送形式での意識調査を実施する。その費用および、データ入力のバイト代や分析代を使用する。また、研究結果の発表のための費用として学会発表や国際誌への投稿のための準備などに、使用する。
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