研究課題/領域番号 |
20K12287
|
研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
大西 修平 東海大学, 海洋学部, 教授 (00262337)
|
研究分担者 |
関 いずみ 東海大学, 人文学部, 教授 (20554413)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 水産資源 / 自主管理ルール / 相互監視 |
研究実績の概要 |
ローカルルールの相互補完の実例のヒアリング調査を実施した。愛知県の離島・篠島は中部太平洋沿岸有数の漁業生産拠点であり、魚種は年間を通じて入れ替わりながら利用される。そのため漁具・漁法と漁場、操業形態の組み合わせの切り替えは通年行われる。同島周辺海域では複数県(愛知・三重)の漁業者が資源を利用している。生産の現場は、経済面で独立性が強い者同士による同一資源の競争的利用という、コモンズの悲劇が起きやすい環境下にある。そこで同海域では資源をめぐる紛争回避のために、歴代の資源管理ルールは特に綿密に運用され、また海の環境変化に合わせてルール改訂を継続しているものと考えた。ルールの見直し(越境や相互補完)は本研究課題の問いに当たる。篠島での聴き取りで得た主な情報は下記の通り。海洋環境の変化のルールへの反映はいまだ積極的に進めていない。水温や塩分など海洋環境情報の解釈にあたっては地域漁業の経験則や慣習のほうが優位であり、ルール作りや改訂に合意形成が得にくいことが理由のひとつに挙げられる。資源管理の長期的な効果より短期的利益追求が主体になり、漁業者が長期的視点を重視するルール改定には積極性を欠くといった事情もある。特に近年は春季のイカナゴ漁業が不振で、地域ルールを変える根拠も弱い。ルール遵守における相互監視と罰則については、過去3年間で違反は発生しておらず、相互監視も自然体で行われている。資源が低水準のため、違反が起きるほどの競争的な操業が行われないという実態が読み取れる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの感染事情に伴う取材と調査の計画の滞りによる。
|
今後の研究の推進方策 |
自主管理ルールの実例の調査を継続する。自然環境条件が異なる海域について、運用されている相互監視の体制がルール越境・相互補完とどのように関わるかという点にも注意する。さらに海域ごとのリーダーシップの機能とルール越境・相互補完の関係にも注目する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ローカルルール相互補完には、ルール遵守の相互監視体制の整備の程度が支配要因として考えられた。またこの背景にリーダーの機能が潜在的要素となりうることが、文献調査からも見え始めた。これらは現時点では仮説であるので、実証のためのさらなる現地調査と理論実験が必要になる。追加的な調査活動・情報収集活動に1年間の猶予が必要と考えた。これに伴い1年間の活動費用を繰り越した。研究期間の1年間の延長で、漁業者とコンタクトをとる。予算は漁業生産の拠点(各地漁港)への旅費として主に使用する。
|