研究課題/領域番号 |
20K12288
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
吉澤 定子 東邦大学, 医学部, 准教授 (80424703)
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研究分担者 |
浅井 鉄夫 岐阜大学, 大学院連合獣医学研究科, 教授 (10509764)
村田 佳輝 東京農工大学, 農学部, 産学官連携研究員 (10526700)
舘田 一博 東邦大学, 医学部, 教授 (20236558)
澤 友歌 東邦大学, 医学部, 助教 (50818531)
青木 弘太郎 東邦大学, 医学部, 助教 (50821914)
臼井 優 酪農学園大学, 獣医学群, 准教授 (60639540)
嵯峨 知生 秋田大学, 医学系研究科, 助教 (80459809)
森 伸晃 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), その他部局等, 医師 (80537374)
原田 和記 鳥取大学, 農学部, 准教授 (80549543)
石井 良和 東邦大学, 医学部, 教授 (90246695)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 市中感染型CDI / One Health / MLST解析 / 伴侶動物 / 家畜 / 土壌 / core-genome SNPs 解析 / 野生動物 |
研究実績の概要 |
2023年3月31日までの時点で、383検体より111株を収集した。CACDI症例においては2施設11例より12株が収集された。伴侶動物由来検体は5施設より収集され、C. difficile検出率は猫7.1%(2/28検体、いずれもTOX-)、犬50%(15/30検体、TOX+4検体)と犬で多く分離された。家畜・家禽における検出率は、牛11%(15/135検体、TOX+9検体、17施設)で、家禽(56検体、8施設)、豚(40検体、4施設)からは検出されなかった。土壌からの検出率は、45.9%(17/37検体、TOX+12検体、公共の地域的に離れた8公園) で毒素産生株の検出率も高く、砂場や遊具下の土壌などから検出された。MLST解析ではST2の分離頻度が最も多く(tcdA+tcdB+cdtA-cdtB-, 10株)、ST42(tcdA+tcdB+cdtA-cdtB-, 9株)、ST15(non-toxigenic, 6株)が続き、分類不能を除く15種類のSTに分類された。ST2, ST42, ST15, ST100, ST203は複数の検体種類から分離されており、ST 42、ST100、ST203は犬、土壌、患者で共通して検出された。tcdA+tcdB+cdtA+cdtB+は1株のみCACDI患者より検出された(ST47)。複数の検体種類から分離されたSTについて、core-genome SNPs 解析を実施した。その結果、ST42において患者と患者生活環境の公園土壌由来株、犬と公園土壌由来株は近縁株と推定された(SNPs≦20)。ST2においては公園間で、ST100においては公園と犬において近縁株が検出された。ST1,ST203に関しては各々の菌株に関連性は認められなかった(SNPs≧30)。CACDI伝播様式として、特にST42において、ヒト、伴侶動物、土壌における関連性がある可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度までに、383検体より111株を収集し、57株についてMLST解析を行った。複数の検体種類から分離されたSTについて、core-genome SNPs 解析を実施し、疫学的な関連性について検討を加えた。 C.difficileの分離率は、家畜と比較して伴侶動物、特に犬において高く(50%)、毒素産生株検出率は26.7%であった。公園の土壌からの分離率は45.9%で、毒素遺伝子の保有率は70.6%と高かった。MLST解析ではST2が最も多く、次にST42が多く、犬、患者、土壌から検出された。患者と生活環境における公園由来の株、犬と犬の散歩圏内の公園株、地域的に離れた公園の株は近縁であった。これらのことから、C.difficileは土壌や伴侶動物などを介してヒトに感染する可能性があり、毒素産生株による感染ではCDIを発症する可能性が示唆された。一方、野生動物糞便検体(タヌキ、キツネ、テン、シカ、ネコ、ハクビシン、アナグマ、アライグマ、ヌートリア)も51検体収集され、ヌートリア、アナグマ、アライグマ、テンそれぞれ1検体より1株ずつ収集されたが、いずれも毒素非産生株であった。 研究成果は、第70回日本感染症学会東日本地方会学術集会、第51回日本嫌気性菌感染症学会総会、およびIDWeek 2021にて報告した。現時点で興味深い研究成果が得られていることから、今後はさらにOne Healthの観点から伝播経路解析に向け研究を続けていく。現時点で得られた研究成果については論文投稿準備中である。
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今後の研究の推進方策 |
すでに菌株の収集及びデータ解析は終了している。上半期は共同研究者とともに研究の総括を行い、必要に応じて追加でNGSによるゲノム解読を東邦大学微生物感染症学講座が保有するベントチップ型のNGSであるMiSeq(Illumina)を用いて行う。DNAライブラリの調整はNextera XT DNA Preparation Kit(Illumia)を用い、シークエンスデータ解析はCLC genomics workbench,CLC bioを導入している。これらの解析により得られたドラフトゲノムにより、C.difficile に普遍的に存在するとされるhouse-keeping gene(tpi)の解析及びMLST解析、毒素遺伝子解析(tcdA,tcdB,cdtA,cdtB)、さらに耐性因子(gyrA,gyrB, rpoA, rpoB, rpoC)の有無について網羅的に解析する。 下半期は研究成果の論文作成を行い、公表する。 野生動物を含めた解析や土壌・伴侶動物を介したヒトへの伝播の可能性についてはさらなる研究の継続が必要であるため、来年度の科研費申請に向けて準備を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年以降COVID-19の流行が続き、共同研究者との対面でのミーティングが中止になり、国内外の学会もWeb開催となったこと等により、旅費が軽減されたことによる。一方、野生動物に関する検体の収集及び解析も進み、総合的な解析に十分なサンプル数が得られ、解析もおおむね終了したことから、2023年度に研究成果について英文論文報告を行い、英文校閲を経て公表する予定である。
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