本研究は,動脈系のインフラサービスと比較して利用者のニーズや理解という点で不利な側面がある下水道や廃棄物収集といった静脈系のインフラサービスを対象として,その整備水準が異なる途上国の都市を対象に,既存のサービスの利用状況の調査,利用者への意識調査や支払い意思の調査,サービスの提供者への聞き取り調査や実態調査を通して,利用者への理解や適切な利用に影響を与える要因を分析して効果的な導入方策を検討するとともに,サービスの提供者側の視点にたって持続的なサービス提供のあり方について検討するものである。 今年度は昨年度末にハノイ市において実施した廃棄物の分別収集についてのオンラインモニターによる追加調査結果の分析を進めた。一昨年度に実施した調査と比べて今回の追加調査ではより年代が高い層(50代,60代以上)において多くのサンプルを確保することができた。これまでの研究でよく利用されてきた3つの心理的要因の他に,コミュニティへの帰属意識や行政への信頼度についての質問も加えて,資源ごみや生ごみの分別行動についての分析を行っているが,一昨年度の調査と今回の調査結果はやや傾向が異なっていることが分かった。ただし,コミュニティへの帰属意識については共通して分別行動に影響を与えていることが示唆された。また,これらの調査とは別に,カンボジア・プノンペン市を対象に,廃棄物収集における経済性や環境負荷の分析を実施し,収集における中間施設の設置や処分場の運用方法の改善が与える効果を明らかにした。
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