研究課題/領域番号 |
20K12290
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
武田 史朗 千葉大学, 大学院園芸学研究院, 教授 (20388119)
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研究分担者 |
山口 敬太 京都大学, 工学研究科, 准教授 (80565531)
大野 智彦 金沢大学, 法学系, 教授 (30531884)
花岡 和聖 立命館大学, 文学部, 准教授 (90454511)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 流域空間デザイン / 流域治水 / ワークショップ / ランドスケープデザイン / シナリオプランニング / グリーン・ブルースポット / プロセス分析 |
研究実績の概要 |
2021年度には、2020年度に実施した京都府K市をフィールドとする流域空間デザインに関するワークショップの成果や、それに基づく流域空間デザインに関する研究成果の発信、また、この考え方の普及活動を、ランドスケープデザインの専門誌を中心に行った。また、流域空間デザインに関連する研究として、河岸利用の変遷と河岸公園の形成についての研究、シナリオプランニングに資する研究として被災地における人口動態に関する研究成果などを発表した。 また、2022年度に発表予定の研究として、「話題カテゴリー」を用いたシナリオプランニング形式のワークショプのプロセス分析では、長期的視点でのまちづくりに関する議論の中で、人口減少や気候変動などの変動要因を考慮して、いかなる課題に対して、どのような考え方のもとで、地域のどのような資源がより望ましい地域社会の実現に向けて活用可能として議論され得るのかを分類した。 また、国内外の複数のシンポジウムで本取り組みに関する講演や流域治水とランドスケープデザイン、政策科学に関する講演や寄稿を行なった。 これらを踏まえ、主要なフィールドとしている亀岡市との対話を続け、2022年度に向けた具体的な協力関係を構築した。その結果、共同での流域空間デザインのヴィジョン作りに向けた取り組み方針を立てることができた。さらに、この取り組みの基礎となる研究として「グリーン・ブルースポット」の概念を考案し、GISを用い堤内地の調節池として活用可能な土地を選定し、その調節能力を評価する解析方法を新たに開発した。具体的には、K市内の支流域をケースとし効率的な調節池の設定を行う可能性とその効果の評価を行った。また、京都府の旧巨椋池を対象とした土地分析に基づく仮想的な調節機能を持った農地のデザイン提案や、流域治水を実現するためのコミュニケーション能力の開発を目的としたボードゲームの開発をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本期間は2020年度の成果発信と、2022年度の取り組みのための準備期間として有効に活用し、発信と普及の活動と、前年度の成果分析と次年度にその成果を活用する基礎的な研究を弛まず実施した。また、それらを礎として、主たるフィールドであるK市との共同での計画を立てることができたことが大きな成果であった。流域治水という広域行政と地域行政にまたがる課題に関して、地域行政との共同で試行的検討を行うことは新規性の高い試みであり、その見込みが立ったことが、本年度の成果として高い価値を持つと考える。 基礎研究面では、グリーンブルースポットを用いたGISによる地形解析では、堤内地を含めた治水と、それを踏まえた景観デザインに関する研究として新規性が高く、また本研究計画の主たる目的であるジオデザインによる流域空間デザインの方法論開発に直接的に資する成果を得られたと考えている。提案型の研究においては、複合的土地利用を前提としたデザイン提案や、ボードゲームを用いた流域治水に関するコミュニケーショントレーニングのツールの開発をおこなったことが、新規性、社会的有用性の点で有益であった。 当初の計画においては2021年度により広範な専門家や利害関係者を含めたワークショップを行い、これを通した流域空間デザインの方法論の開発にとりかかることを望んでいたが、感染拡大防止との両立が困難であり、実施が叶わなかったものの、この期間を準備期間として丁寧に活用することで、全体としては当初計画に劣らない進捗を達成できたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、主要なフィールドであるK市との連携で2021年度に協議した計画に基づき、より具体的で現実的な同市の将来ビジョンの検討の一環として、K市における流域空間デザインの研究会を、地域のステークホルダを含めた体制で実施し、この成果と過程を本研究における調査分析の主対象とする。 この過程では、2021年度の研究成果であるグリーン・ブルースポットを用いた調節池候補の特定と評価モデルを活用し、複数のテストプランを策定することによって複合的土地利用を前提とした流域空間デザインに関するジオデザインの形式を導入したい。この過程と結果を分析することで、域空間デザインの方法開発の成果の検証と課題の特定を行う。また、可能であれば策定された複数ビジョンの成果に対する市民のアンケートを実施し、一般市民による流域空間デザインに関する評価構造の分析を行いたい。また、本研究計画全体として、コロナ禍によって延期してきた海外の先進事例の視察を実施し、知見を整理するとともに、これらを上記の研究会の参加者に共有し、議論の前提知識として活用する。 以上の成果を取りまとめ、複合的土地利用の概念とジオデザインを用いた流域空間計画手法の開発に関する成果とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度には2020年度の成果を踏まえたより現実的、専門的な流域空間デザインに関するワークショップを行政との共同で計画実施する予定であった。また、それに伴い先進事例の調査を行うための調査旅費の執行を計画していた。これらは共にコロナ禍下における感染拡大防止対策のために見送らざるを得なかった。一方、2022年度には協力する行政と上記2件について実施の予定である。以上から、2021年度の未使用額を2022年度に繰り越して使用することを予定している。
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