研究課題/領域番号 |
20K12291
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
伴 ひかり 神戸学院大学, 経済学部, 教授 (70248102)
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研究分担者 |
藤川 清史 愛知学院大学, 経済学部, 教授 (60190013)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | パリ協定 / 消費基準のCO2排出量 / 応用一般均衡分析 / 産業連関分析 |
研究実績の概要 |
初年度は,貿易と環境について,大きく分けると2つの研究を行った.第一に,アメリカのパリ協定からの離脱及び復帰の経済・環境効果を,動学的応用一般均衡分析と産業連関分析を組合せることで検討した.炭素削減政策のGDPや経済厚生への影響は貿易構造に大いに依存することが明らかになった.また,産業連関分析によれば,アメリカのパリ協定からの離脱によるCO2排出量の増加のうち約10%は,アメリカ以外の国の貿易を通した消費基準のCO2排出量の増加によることを示した.さらに,炭素政策のタイミングが資本蓄積に影響を及ぼし,国際競争力への影響を通して貿易,ひいてはGDPの動学経路に影響を及ぼすことを示した.これらについては,3つの国際会議で発表し,研究の深化と拡張につなげた. 第二に,アメリカと中国の炭素削減政策や技術進歩の経済・環境効果を,電力部門が送電・配電部門とベースロードとピークロードの区別のある11種類の発電技術に分かれたGTAP-E Power モデルを利用して比較検討し,1つの国際会議で発表した.ソーラー及び風力発電への補助金と石炭消費税のGDPに比してのCO2削減効果はアメリカと中国で大きく異なること,また,貿易収支についての設定によってそれらの効果が異なることなどがわかった. さらに,炭素削減政策における農業部門の役割を検討するための準備として,第一に,日本の農林分野での排出量取引の取り組みの現況の把握,及び海外と比較のための文献を収集し,整理し始めた.第二に,GTAPの土地利用・土地被覆のデータベースを入手し,関連する文献を収集し,土地利用・土地被覆に関わる分析についての基礎知識を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
貿易と環境に関して,初年度は炭素削減政策の経済・環境効果を分析し,国際会議での発表を通して,研究を拡張・深化させることができた.また,農業分野の排出量取引に関する資料や土地利用・土地被覆データも入手でき,次年度の研究の準備が順調にできた.
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今後の研究の推進方策 |
貿易と環境に関して,初年度は炭素削減政策の経済・環境効果の視点から考察したので,今年度は貿易自由化の視点からも考察する.具体的にはRCEPや中国の一帯一路構想などの経済・環境効果の視点から考察する.さらに,貿易と環境の相互支持性という視点を加える. また,初年度に研究した初年度に研究したアメリカのパリ協定からの離脱及び復帰の経済・環境効果については,論文にまとめ公刊する.アメリカと中国の炭素削減政策の経済・環境効果については,炭素税や国際排出量取引の分析を加えて論文としてまとめる. 農業分野の役割については,日本の農林分野での排出量取引の取り組みと課題,海外と比較について整理し,論文にまとめる.また,応用一般均衡分析を用いて,農業分野を含めた排出量取引の経済・環境効果を考察する.さらに,土地利用・土地被覆の経年データを用いて,それらの変化と経済や環境の変化について考察する.
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次年度使用額が生じた理由 |
Covid19の影響で,海外での学会報告や調査が行えなかったことが主な理由である.次年度は関連図書やデータベースの購入,英文校閲費などに補てんしたい.
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