研究実績の概要 |
リスク比較に資する用量反応関係の導出、および用量反応関係を用いて日本におけるリスク評価実施について研究を進めた。 今年度は化学物質影響の指標として相対リスクを用い、用量と相対リスクについて用量反応曲線の導出を行うものとした。具体的には、成人の鉛リスク評価について、エンドポイントを循環器症状(死亡)として行った。背景としては、小児のIQをエンドポイントとした場合の鉛の影響評価は比較的多く実施され、日本でもリスクが評価されているものの、成人については評価が殆ど行われていないことが挙げられる。なお既往研究、WHOのGlobal Burden of Disease Studyにおいても骨中鉛濃度、収縮期血圧上昇、循環器症状による損失余命を算出している。今年度は文献レビューとリスク評価の指標を検索した。鉛を対象物質として血中鉛濃度あるいは骨中鉛濃度と循環器症状および症状に起因する死亡に関連する学術文献約50報をレビューした。Navas-Acien, et al. (2007, 2008)のレビュー/メタアナリシスに取りまとめられた研究に加え、血中鉛濃度と循環器症状に起因する死亡に関するコホート研究3報(Schober, et al., 2006; Aoki, et al., 2016; Lanphear, et al., 2018)から確認した相対リスク、オッズ比、ハザード比をフォレスト・プロットに示した。得られた情報から、循環器症状(死亡)をエンドポイントとした日本人成人のリスク評価の指標を決定した。 化学物質のリスク比較に関して、急性影響と慢性影響についても既存の比較手法について検討し、ガソリンスタンド等の事例についてレビューした。
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