研究課題/領域番号 |
20K12304
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
泉 留維 専修大学, 経済学部, 教授 (80384668)
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研究分担者 |
中里 裕美 明治大学, 情報コミュニケーション学部, 専任准教授 (20555586)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 地域通貨 / 木の駅 / 地域循環共生圏 / 自伐型林業 |
研究実績の概要 |
日本における地域通貨は、2019年末時点で、延べ立ち上げ数が640を超えている。その中で、十全に機能する可能性を持つ地域通貨が「木の駅」方式と捉えている。2020年度は、2021年度以降の「木の駅」方式の地域通貨の現地調査(参与観察)や本格的な分析のための情報収集・整理等を中心に行った。 第一に、2019年度に実施済みの「木の駅センサス2019」の欠損データを補い、定例会や講習会の頻度や傷害保険の契約状況等を確認するために追加調査を行った。材の出荷量や地域通貨の発行額等の基礎データについては大きな修正は発生せず、2018年は年間約1.17万トン(n=40)の材が出荷され、地域通貨の総発行額は約6500万円(n=40)であった。持続可能な地域づくりにつながる「木の駅」とは、「多様な人びとが、頻繁に寄り合い、民主的に議決と実行ができ、学びの場が用意されている」ものと仮説を立てているが、実際に出荷量や出荷登録者数が逓減していないところは、月例会などの定期会合を欠かさず、技術講習会も行う傾向が見て取れている。今後、さらにデータを収集し、相関関係等の検証を行う予定である。なお、「木の駅センサス2019」の個票データおよび分析結果の一部については、HPで公開している。 第二に、「木の駅」方式の地域通貨を含む日本各地の地域通貨について実態(導入目的や規模等)を明らかにするために質問紙調査を行うことを計画しているが、送付先等の基本情報を得るために稼働中の地域通貨の一覧の更新作業を行った。2019年末時点で189の稼働中の地域通貨を確認し、また2020年度中に17の電子通貨タイプの地域通貨が新規に立ち上がっていたことも確認できた。2019年末時点でみると、189の地域通貨のうち、「木の駅」方式は55、電子通貨タイプは20となっており、この2つが今の日本の地域通貨の主流といっても過言ではない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は、2021年度以降の「木の駅」方式の地域通貨の現地調査(参与観察)先を選定などのための予備調査や、日本各地で行われている地域通貨について実態(導入目的や規模等)を明らかにするための質問紙調査を行うことを計画していた。しかし、コロナ禍のため、中山間地にある「木の駅」方式の地域通貨の現場へ行くことができず、質問紙調査については送付先リストや質問紙の作成に遅延が発生し、年度内に実施ができなかった。予備調査については「木の駅センサス2019」の追加調査でほぼ代替可能となっており、質問紙調査については稼働中の地域通貨の一覧の更新は終了していることから2021年度中には実施可能と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、「木の駅センサス2019」やその追加調査のデータ等に基づき、「木の駅」方式が日本各地に普及した要因の抽出や、「木の駅」の持続性と定例会・講習会の頻度の相関関係等の検証などを行う。また、日本各地で行われている地域通貨について実態(導入目的や規模等)を明らかにするための質問紙調査の年度内実施を目指す。 もともと予定されていた現地調査(参与観察)に関しては、「木の駅センサス2019」やその追加調査などから、現地調査の対象となる「木の駅」を数カ所抽出するが、新型コロナ感染症が収束しない場合は、2022年度に現地調査を延期したり、「木の駅」の出荷登録者に対する質問紙調査については訪問調査(留置法)から郵送調査へ変更したりするかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、2020年度は、予定していた予備的な現地調査を行うことができず、また全国の稼働中の地域通貨に対する質問紙調査の準備が遅れてしまった。2021年度は、新型コロナの感染状況を注視しつつ、可能な範囲で現地調査を実施し、質問紙調査については年度後半に実施できるように準備を進める。
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