本研究は、都市化の異なる発展段階にある3つの大都市圏を対象に自然災害レジリエンスのための新しいソーシャル・キャピタル(SC)ネットワークの動的な推移を分析する。研究目的は、1)成長都市における自然災害レジリエンスのための新しいSCネットワークの形成メカニズムを明らかにする、2)自然災害レジリエンス政策シナリオ下で新しいSCネットワークをシミュレーションすることである。 2023年度は、自然災害レジリエンスのためのSCネットワークをシミュレーションするとともに、防災政策への提言を行った。住民間の社会的繋がり(SC)は、コミュニティのレジリエンスを高める。一方で、都市化の進展や社会構造により、共助行動やリスク・コミュニケーションのあり方は変化する。第1の成果として、都市化が進展しても、信頼、エンパワーメントや協力によって形成される相互扶助ネットワークは強固である一方で、郊外化から再都市化への移行においては、個人関係のネットワークのつながりが弱くなることが分かった。第2の成果として、安否確認ネットワークは各国の社会構造やSC構造を反映しており、民族の多様性の高いネットワークはレジリエンスの高いネットワークであることが分かった。 事例研究を通して、第3の成果として、アメリカホノルル郡のネットワークはコミュニティを超えてよりオープンであり、住民の経済ネットワークが安否確認ネットワークとつながる傾向が見られた。 第4の成果として、愛知県のネットワークはより閉鎖的であり、安否確認ネットワークは信頼と交流が基盤となり構築されていることが明らかとなった。最後に、自然災害レジリエンス行動におけるSCネットワークの活用と、統合的安否確認システムについての提言を行った。
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