研究課題/領域番号 |
20K12310
|
研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
岸川 洋紀 武庫川女子大学, 生活環境学部, 准教授 (70469071)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | リスクコミュニケーション / 安全・安心 / COVID-19 / ワクチン接種 / ワクチン忌避 |
研究実績の概要 |
2022年度は2021年度に実施した調査結果について再分析を行い,ワクチン接種行動の実態について詳細な分析を行った。また,その結果を学術論文として投稿した。 ワクチン接種における忌避行動および忌避行動の個人差に特に注目して,大学生を対象とした調査データの再分析を行い,以下の結果を得た。1)新型コロナウイルス感染症に対する危険性の認知とワクチン接種による副反応の危険性の認知の相対評価とワクチン接種行動との関連を調べた結果,関連が認められた。2)新型コロナウイルス感染症への自身や周囲の人への感染リスクや重症化リスクの認知とワクチン接種行動との間に関連は認められなかった。3)ワクチンの効果への認識や長期的な副反応への懸念と接種行動との間には統計的に有意な関連が認められた。しかしながら,疲労や発熱などの短期的な副反応への懸念と接種行動との間には関連が認められなかった。4)自粛生活へのストレスと接種行動との間に関連が認められ,外出の機会が減ることや1人でいることへのストレスを強く感じている者ほどワクチン接種を行っている傾向がみられ,自粛生活からの開放願望がワクチン接種を促進している可能性が示された。5)ワクチンに対する認識によってワクチン忌避者を分類したところ,忌避者は一律にワクチンの効果や副反応へ懸念をもっているわけでなく,ワクチンの効果全般への期待がない者,ワクチンの効果は認めているが長期的な副反応への懸念が強い者,重症化予防効果は認めているが感染防止の効果は認めていない者など,考え方に多様性があることが示された。6)積極的に接種行動をとった回答者についても,ワクチンの効果を強く認めている者や副反応への懸念が弱く自粛生活からの解放を強く望んでいる者など積極的な接種についても多様な理由が確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2つの理由から研究計画が遅れている。 1つ目の理由は,論文投稿にあたってのデータの再解析に予定よりも大きく時間がかかり,さらに査読プロセスにおいて幾つか追加分析を要する指摘を受けたためである。貴重な指摘であったため結果として論文内容は良くなったが,研究計画としては遅れが生じることになった。 2つ目の理由は,2022年度においても新型コロナウイルスの感染はおさまらず,特に7月からの第7波,10月からの第8波では,過去最大の感染者が発生し,状況が常に変動していたため,調査の実施時期としては適切でないと判断し,計画を遅らせることとなったためである。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年5月初旬において,感染の状況は落ち着いており社会的にもいわゆる「コロナ禍」という雰囲気ではなくなっているため,以下の点に着目したweb調査を行う予定である。 新型コロナウイルス感染症については,当初は非常に危険視されていたが,2022年度ともなると危険性はあまりないという主張もみられ一部認識が変わっている。この認識の変化について検証を行う。ワクチン接種行動についてはメディアの影響が大きいと考えられるが,現在の調査では十分な検討ができていないため,この点について検証を行う。ワクチンについては,接種が始まった当初と比べ副反応や有効性に対して疑問視する声も高まっている。この実態について検証を行う。また,約3年間のコロナ禍の期間をへて,他の問題へのリスク認知,リスクに対する考え方,専門家や政府に対する信頼性,個人のライフスタイルなどにも大きく変化が生じたと考えられるが,これらの点についても幅広く状況を調査する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2022年度に実施する予定であったweb調査について,研究実施期間を延長し2023年度に実施を延期することを決定したため,次年度使用が発生した。
|