本研究は、日本に中長期間滞在する外国ルーツの者が日本国内で結核発病することを阻止するために必要な情報の提供のあり方を、近年移入者数が増加しかつ結核高蔓延国であるネパールを対象に検討することを目的とした。 1.日本と当該国での結核対策の比較検討では、感染症の診断手法や治療方針、また治療費の自己負担の有無が異なっていた。これらは留学や就業のために来日するネパール人の弊害となりうることから治療参加での課題であり、事前に十分な情報提供が必要であると考えられた。2.留学や就業目的で日本への滞在を希望する若年者を対象とした調査では結核に対する知識は少なく、ただ単に日本における結核対策の概要を説明するだけでは目的達成には不十分であると考えられた。日本での新規結核患者数が多い6か国において、日本への入国前に結核スクリーニングを実施することが決定している。結核の潜伏期間は6か月から2年程度と長期であり、入国前結核スクリーニング受診時はクリアでも入国後に発病する可能性が残る。①入国前からの結核予防行動が重要であること、②入国後は発病予防および感染予防に配慮した行動が望まれること、を十分周知する必要があり、日本への渡航希望者に対して本国での結核教育の必要性を認めた。以上のことを踏まえて、3.当該国での日本への渡航を希望するネパール人若年者に対する結核教育の教材開発を試みた。また、作成した結核教育教材を用いた授業を行い、その効果を検討した。 結核の発病・増悪には、他疾患(AIDS、糖尿病や新型コロナ感染症(COVID-19))との関連が指摘されている。特に該当者数が多い糖尿病やCOVID-19との関連は更なる検討を加えて、注意喚起の是非について検討する必要がある。本研究ではこのことを踏まえて、糖尿病患者における結核発病、およびCOVID-19の既往の有無と結核発病との関連を検討する研究を開始した。
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