研究課題/領域番号 |
20K12326
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
細谷 幸子 国際医療福祉大学, 成田看護学部, 教授 (60516152)
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研究分担者 |
葛西 賢太 上智大学, グリーフケア研究所, 准教授 (00281014)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | イスラーム / 終末期患者 / チャプレンシー |
研究実績の概要 |
2021年度は引き続き、新型コロナウィルス感染拡大の影響でイランへの渡航が困難だったため、イランにおける実践との比較を目的として、国内で他国・他宗教での取り組みに関する情報収集と研究会の開催をおこなった。 一つに、研究代表者細谷と研究分担者葛西は、「チャプレン研究会」を立ち上げ、さまざまな国・宗教で、社会的に脆弱な立場に置かれている人たちや病者、若者、兵士や受刑者の話を聞く傾聴者がどのような活動をおこなっているかについて学ぶ研究会を企画した。チャプレンとは、病院や学校、軍隊や刑務所、企業やさまざまな団体で、困難に直面した人(どの宗教を信じるか/信じないか問わず)の話を聴き、問題の解決あるいは受容や対応を支援する宗教的専門職として位置付けられる。2021年度は、アメリカのハートフォード国際宗教平和大学にて養成教育にも携わっているムスリム・チャプレンのビラール・アンサーリ博士を招き、オンライン研究会を開催した。 二つに、アメリカ、イギリス、カナダでイスラーム的ケアを提供する「ムスリム・チャプレン」として活動する人たちについて、文献の精読やインターネット上での情報収集をおこなった。また、米国の牧会カウンセリング史、スピリチュアルケア前史、現代宗教と傾聴、イスラームチャプレンとその死生観、米国イスラムカウンセリング、精神疾患とレジリエンス、ボランティア活動実践等に関する資料を収集し、情報を共有した。2014年に刊行されたゾフィー・ギリアット=レイ(Sophie Gilliat-Ray)氏の書籍Understanding Muslim Chaplaincyについては、内容を紹介する研究会を開催し、日本に住むムスリムやさまざまな宗教的背景を持つ傾聴者、中東研究やイスラーム研究に携わる人々などの参加を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルス感染拡大の影響が続き、2021年度もイランへ渡航することができず、参与観察やインタビュー、ペルシャ語関連資料の収集などを実施することができなかった。また、代表者は医科大学に所属しており、看護師資格を持つ大学教員としてワクチン接種等に駆り出されるなど学内業務の負担が増加し、調査研究に従事する時間を確保することが大変困難な状況にあった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は新型コロナウィルス感染拡大状況を踏まえ、可能であれば、海外での現地調査を実施する。2021年度の成果の一つとして、研究会参加者との情報交換から、日本国内に住むムスリムもイスラーム的ケアを必要としている状況がわかってきた。このことから、イランの状況の比較対象として、欧米での取り組みだけでなく、日本のムスリムに関する情報収集もおこない、多角的な分析につなげる。また、「チャプレン研究会」を通して、各国・各宗教の傾聴・相談・宗教的ケアの実践に関するオンライン研究会を継続し、研究者に限定せず、さまざまな立場の人たちと情報共有・議論の場を設ける。イランの宗教者やスピリチュアルケア提供者とは、オンライン・セミナー等を通して交流と情報収集を続ける。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大の影響が続き、2021年度も旅費の支出がなく、予算の余剰分が2022年度に持ち越された。2022年度は、可能であれば海外渡航による調査や国内のモスク等の訪問による調査を実施することを考えているため、旅費の捻出が必要とされる。また、各国における終末期ケア、スピリチュアルケア、イスラーム的ケアの実践や状況に関する文献・資料の収集のための書籍購入費や文献複写費が必須となる。さらに、オンライン研究会開催に際して、講師謝金、通訳者資金、翻訳料等の使用が予定されている。
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