研究課題/領域番号 |
20K12328
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
立石 洋子 同志社大学, グローバル地域文化学部, 准教授 (00633504)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ロシア / ウクライナ / 記念碑 / 記憶 |
研究実績の概要 |
当初はロシア・ソ連の歴史教育について研究することを課題としていたが、新型コロナウィルスの流行のために2020年度からロシアでの資料収集ができておらず、今年度もロシアによるウクライナ侵攻を受けてロシアへの渡航が困難になったため、昨年度と同様に国内で入手可能な資料を用いて研究を行った。また研究課題は、歴史の評価という点で歴史教育とも関連する記念碑建設をめぐる議論に変更した。これに加えて、ウクライナとロシアの関係についての講演や論説の執筆などに取り組んだ。 ウクライナとロシアの関係に関連するものとしては、立石洋子「自国史像を分断させた記憶政策」『Voice』533号(2022年5月)でウクライナの記憶政策について解説し、ソ連解体後のロシアにおけるアイデンティティの形成とウクライナについての議論や、その変遷について、立石洋子「ロシア、ウクライナの歴史とアイデンティティの形成」『ユーラシア研究』67号、2023年3月を発表した。 口頭での報告としては、2022年10月に法政大学で開催されたロシア史研究会大会での報告で、近年のロシアで、ソ連時代の政治的抑圧や、革命と内戦期、ソ連時代の政治指導者がどのように評価されているのかという問題を、記念碑建設をめぐる論争という観点から検討した。また10月には仙台国際センターで開催された日本国際政治学会2022年度大会で報告し、ロシアとウクライナの関係を、主に2000年代半ば以降の記憶政治という観点から検討した。これらの報告をもとに、論文を発表する予定である。 また2023年3月には、一橋大学経済研究所のロシア研究センター・オンラインコンファレンス「世界秩序転換期における新興市場」で報告し、独ソ戦の記憶がその後のソ連でどのように継承されてきたのかという問題を、1940年代後半から1960年代を中心に検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ロシアへの渡航が困難になったため、研究課題を当初の歴史教育から、記念碑建設などその他の記憶政策、歴史政策に関連するテーマに変更した。そのため当初の研究計画は進んでいないものの、ロシアやソ連の記憶政策、歴史政策の検討というより大きな研究課題に別の角度から取り組んでおり、一定の成果があったことから、おおむね順調に進展していると判断した。 具体的には、2022年10月に法政大学で開催されたロシア史研究会大会での報告(「ソ連解体後のロシアの自国史像」)と、仙台国際センターで開催された日本国際政治学会2022年度大会での報告をそれぞれ論文として投稿しており、現在査読中である。また2023年3月の一橋大学経済研究所のロシア研究センター・オンラインコンファレンス「世界秩序転換期における新興市場」での報告については、2023年度にこの報告をさらに発展させて他の研究会で報告を行い、それをもとに論文を執筆して投稿する予定である。 これらの論文を通じて、ソ連・ロシアにおける記念碑建設と政治、歴史家をはじめとする知識人と政治の関係、歴史政策における知識人の役割、戦争の記憶の継承といった、ソ連・ロシアの歴史政策、記憶と政治の問題において重要なテーマの一端を明らかにすることができると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
前述のように今後もしばらくの間はロシアでの資料収集が困難であると考えられることから、研究課題を当初の歴史教育から、日本で比較的資料を入手しやすい記念碑建設など、その他の記憶政策、歴史政策に関連するテーマに変更する。 当面の課題としては、現在査読中である2つの論文を発表することと、2023年3月の一橋大学経済研究所のロシア研究センター・オンラインコンファレンス「世界秩序転換期における新興市場」での報告をさらに発展させて京都大学人文学研究所で6月に開催される「人物で見る第二次世界大戦」研究会で第二次世界大戦、独ソ戦の記憶がソ連やその後のロシアでどのように受け継がれてきたのかという問題について報告を行い、それをもとに論文を執筆して学術誌または紀要に投稿する予定である。 また11月に東北大学で開催される2023年度西洋史研究会大会シンポジウムでは、現代ロシアにおけるファシズム論、全体主義論を検討する報告を行い、それを通じて現代のロシアにおけるスターリン時代の評価をめぐる議論の様相とその変遷を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
ロシアへの渡航を中止したため、旅費の支出が予定よりも減少した。次年度には書籍など資料の購入、英文校閲などの費用として支出することに加えて、可能であればロシアに渡航し、資料収集を行うことを計画している。またオンラインではなく対面での研究会や学会が増加していることから、国内出張の費用としても支出する。
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