最終年度であったが、現地調査は行わず、以下2冊の現地語文献の英訳作業を実施した。 ・スレブレニツァ事件の首謀者の一人で実質上の責任者と推定されるリュビシャ・ベアラ大佐(Ljubisa Beara:ボスニアのセルビア軍VRS幕僚の治安部門トップ)の評伝、"Beara Dokumentarni roman o genocidu u Srebrenici"(Ivica Dikic著、Naklada Ljevak、2016年、246頁)。 ・スレブレニツァ事件時のボスニアのセルビア軍の最高司令官であるラトゥコ・ムラディチ将軍(Ratko Mladic)の評伝『Komandant』(Bojan Dimitrijevic著、Vukotic media、2018年、337頁)。 最終成果報告として2023年2月28日に、立教大学にて公開講演会「ジェノサイド後の分断社会における和解と共生の可能性と不可能性―スレブレニツァを事例に、『犠牲者意識ナショナリズム』の視点から」を、対面・オンラインのハイブリッド形式で開催した。本来、本科研は、ジェノサイドを経験した移行期社会の和解や共生の可能性について多方面から検討することを目的としていたが、3年間の研究の過程で目にした現地情勢から「不可能性」をタイトルに追記し、またスレブレニツァの「犠牲者意識」がナショナリズムと深く結びついていることから、このような演題となった。 登壇者は、韓国・西江大学・林 志弦(Jie-Hyun Lim)教授、英国・ロンドン大学のヤスナ・ドラゴヴィチ=ソーソ(Jasna Dragovic=Soso)教授、長 有紀枝(立教大学)、橋本敬市JICA国際協力専門員・平和構築担当、クロス京子京都産業大学教授。国内外の60の大学や研究機関の研究者や学生、中高の教諭、メディアなどから対面・オンラインで計200名が参加した。
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