研究課題/領域番号 |
20K12333
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
鈴木 恵美 中央大学, 文学部, 教授 (00535437)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | エジプト / 政治史 / 近現代 / 中東 / 軍 / 抗議デモ / 名望家 |
研究実績の概要 |
令和5年度は、エジプトにおいて、混乱した政治に国軍が介入する背景について、エジプトが名目的独立を果たす1922年前後の学生デモとの関係から考察した。資料は既に所有しているアブドゥルワッハーブ・アル=ナッガールの1919年革命についての手記に加え、イスタンブルのIsam 図書館とカイロの国立図書館、そしてカイロアメリカン大学が所蔵する複数の雑誌記事を使用した。その結果、1930年代に大規模化が指摘される学生デモは、19年革命時にも抗議運動だけでなく、破壊行為にまで及ぶ相当な規模であったことが分かった。また、1930年代の学生デモについては、発生頻度としてはかなり高いものの、抗議が暴力化したり先鋭化する例は相対的に少ないことが分かった。学生デモは主にワフド党支持者によるものであり、ワフドと対立する人民党などは、ワフド党のマクラム・ウバイドが学生デモを誘導していると非難してきたが、ウバイドがデモを誘導していたことを示す資料は確認できなかった。この点については、引き続き資料を精査していきたい。一方、暴力化する傾向が高かったのは組織化されない抗議行動であったことも明らかとなった。これが軍や警察の行動に及ぼした影響、そして軍と警察の関係については次年度に考察する。特に警察とデモあるいは暴動との関係については、2011年の政変以降重要とされる視点である。警察に関する資料は軍よりも少ないため、考察には困難を伴うが、考察を試みたい。 なお本来、当該年度に考察する予定だった総括、つまりエジプトの政治の最終局面に国軍が介入と抗議デモの関わりについては、次年度に持ち越すこととした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究開始時にコロナ禍により海外調査が実行できなかった影響で、研究に遅れが生じている。昨年度から海外調査を再開し、順調に後れを取り戻しているものの、多少の遅延がある。そのため、当初の研究期間を1年延長し、研究の総括に従事する。併せて成果としての書籍の執筆も進める。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、研究の総括として抗議デモと軍の政治介入についての通時的な関係を考察する。非エジプト系の上層部で占められていた軍がいつ、何を契機に国民軍へと変容したのか。そして、どのようなタイミングでどのようなデモと呼応、あるいは利用するのか、抗議デモの内容を精査することで明らかにすることで本研究の総括とする。また、単著の執筆を進める。予定では、中公新書『近現代エジプト』として刊行する予定である。今年度中の脱稿を目指したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、研究開始時に海外調査が実行できなかった影響で、研究に遅れが生じたため。令和6年度は、約15万程度の研究費を残しており、引き続き研究遂行に必要な書籍などを購入する予定である。
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