第4年目の2023(令和5)年度の研究実績は、以下のとおりである。 (1)現地調査(フィールドワーク・資料収集): 2023(令和5)年3月から2024(令和6)年4月までの約1年間、愛媛大学外国派遣研究員としてタイのパンヤーピワット経営大学にて在外研究に従事していたため、インドでの現地調査を実施することができなかった。 (2)資料収集・整理:インド・ウッタラーカンド州の内外でこれまでに収集した資料の整理・読解の作業を進めるとともに、2024(令和6)年1月にインド・タミル・ナードゥ(Tamil Nadu)州を短期訪問した際に関連資料を収集することができた。 (3)成果発表:インド・ウッタラーカンド州で展開したチプコー(森林保護)運動が地元社会に何をもたらしたかについて、2023(令和5)年5月28日に一橋大学で開催された2023年歴史学研究会大会において発表(オンライン)を行った後、『歴史学研究』No.1041(2023年増刊)号で論文発表を行った。第1に、チプコー運動が始まった当時、地元の人びとの最大の不満の種であった地域外の民間企業による伐採が止まったことは重要である。第2に、運動内部に多様な意見や立場をもつ者がいたおかげで、政局の変化への柔軟な対応が可能となった点も重要である。第3に、チプコー運動とその後の展開のなかで、中山間地域の農村を拠点とする多くの「村落キーパーソン」が育てられ、地元社会が直面するさまざまな困難な課題に対処してきた点も重要である。
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