研究課題/領域番号 |
20K12354
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研究機関 | 大正大学 |
研究代表者 |
鵜川 晃 大正大学, 社会共生学部, 教授 (70326320)
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研究分担者 |
高瀬 顕功 大正大学, 地域構想研究所, 専任講師 (90751850)
星野 壮 大正大学, 文学部, 准教授 (60725381)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 移住者 / SRHR / 国際保健 / 文化変容 / 在留ベトナム人 |
研究実績の概要 |
少子高齢化による労働力不足問題を抱える日本社会には青年期から成人初期にある労働移民の流入が増えることが予想されるが、彼らの定住における課題の一つに「性」と「生殖」に関する健康と権利が挙げられる。労働移民の「望まない妊娠・出産、もしくは堕胎」を回避し定住を支えるためにも、ホスト社会で安全で満足のいく性生活をもつこと、さらに必要な医療・保健サービスを円滑に活用できるための心理教育プログラムを開発する必要がある。ゆえに日本に暮らす労働移民の文化的背景(政策、法律、宗教、医療・保健、習慣、価値観)のみならず「性」と「生殖」の健康と権利に対する知識、認識、対処行動を把握し国際保健の視点から分析を行う。 令和3年度は福島県いわき地方の自治体、特定技能受け入れ企業を対象とし「ベトナム人の性と生殖の健康と権利を守るためにできること」テーマにワークショップをオンラインで実施した。また福島県いわき地方在住の留学生、特定技能、結婚移民らを対象としオンラインにて「ベトナム人女性の性と生殖の健康についての講座」を実施した。 さらに留学生および特定技能として来日予定のベトナム人、および在留ベトナム人を対象とした①性と生殖の健康と権利を守るためのパンフレット、②性と生殖の健康と権利を守るための避妊教育の動画を作成した。どちらも日本語とベトナム語バージョンを作成しており、ベトナム人および彼らの受け入れ先の日本人も内容を把握することができるものである。留学生や特定技能の受け入れ先である学校や企業の人々からは「彼らが性交渉をせずに余暇を過ごすための方法を教えて欲しい」という話があり、未だ受け入れ先の日本人らが留学生や特定技能の人々の「性」の権利に対して否定的であることが伺えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
昨年度は新型コロナウイルス感染により県および国を超えた移動が制限されており国内、ベトナム本国での調査が思うように進まなかった。オンラインを用いてベトナムからの留学生や特定技能を受け入れている自治体、企業、そして在留ベトナム人に対してオンラインでワークショップを行うことができたが、アンケート調査やインタビュー調査は実施することができなかった。その理由として現在、新型コロナウイルス感染拡大にて在留ベトナム人の多くがメンタルヘルスの問題を抱えており、それに対する支援が必要であったこと、さらには外国人入国制限により新規の留学生や特定技能が少ないこともあり、今年度は調査が進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染状況にもよるが、今年度は日本の特定技能生・ 受け入れ機関に所属するベトナム出身の男女、およびベトナム本国の特定技能生・送り出し機関に所属する男女に対して「性と生殖の健康と権利を守るための避妊教育」動画の視聴前後で①知っている避妊方法、②実際に行なったことのある避妊方法、③避妊の頻度、④性に関する知識を得た方法 、⑤日本で生活するなかで実践しようと思う避妊法、⑥日本での生活における性と生殖に関する不安、疑問点についてアンケート調査を行う。また同意が得られた者に対しては半構造化面接法を用いたインタビュー調査を行う。①自分が受けた性教育について、②友人、知人との性に関する知識の共有、③避妊方法の選び方、④交際相手と避妊方法について話し合う機会、⑤堕胎について問う。また動画やパンフレットの内容についてのフィードバックも得る。 インタビュー調査からはベトナム人らの「性」と「生殖」に関する文化実践、その根底にある価値観、 移住による対処行動の変容を把握する。アンケート調査結果からは望まない妊娠・出産に至る要因とベトナム人らの支援探索行動の傾向を明らかにする。両調査結果をもとに「安全で満足のいく性生活をもつこと、さらに必要な医療・保健サービスを円滑に活用できるための心理教育プログラム」を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は新型コロナウイルス感染により県および国を超えた移動が制限されており国内、ベトナム本国での調査が出来なかった。そのため令和3年度は調査内容、調査方法の変更を検討した。今後も対面での調査が困難な状況が続いた場合、動画視聴やオンラインツールを用いてアンケートやインタビュー調査を実施できる準備を行なった。令和4年度は新型コロナウイルス感染状況を鑑みながら対面もしくはオンラインでの調査を実施する。
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