研究課題/領域番号 |
20K12356
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
中嶋 聖雄 早稲田大学, 国際学術院(アジア太平洋研究科), 教授 (70734325)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 中国 / 映画 / インディペンデント映画 / 生産 / 流通 / 消費 / 批判的公共言説 / 地域研究 |
研究実績の概要 |
本研究は、現代中国のインディペンデント映画――政府の公式上映許可を得ていない、比較的低予算の映画;フィクションとドキュメンタリー双方を含む――に焦点を当て、その生産・流通・消費を通じた「批判的公共言説」(critical public discourse)の生成メカニズムを、中国国内事情を越えるトランスナショナルなつながりをも視野に入れて、主に社会学的参与観察と質的インタビューの方法を用いて、明らかにすることを目的としている。「批判的公共言説」とは、政府の政策に対する直接的批判に限らず、より広義であり、権威主義体制下の現代中国において政府が発信する様々な公共言説とは異なるオルターナティブな省察である。批判的公共言説には、1)映像作品としての映画と2)作品に関する批評や討議のような、映画をとりまく非・映像言説が含まれる。分析的には、「国家と社会」、「生産と消費」、「テキストとコンテキスト」、「人とモノ」、「研究者と研究対象」、「ナショナルとトランスナショナル」の「六つの関係性」に焦点を当て、本質主義を超える、「関係性的社会学」(relational sociology)に基づいた地域研究の彫琢を目指す。初年度である2020年度は、研究枠組みの彫琢/映画作品の収集・鑑賞/2021年度以降実施の中国におけるフィールドワーク詳細の確定を目指した。その結果、6人の映画監督(フィクション映画監督3人;ドキュメンタリー映画監督3人)のケーススタディをその焦点とし、中国でインタビューを行い、その生産、流通、消費過程の参与観察を行うことを確定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度である2020年度中(2021年2月)に、中国インディペンデント映画監督へのインタビューと製作過程の参与観察と流通・消費の場の参与観察・参加者へのインタビューからなる中国でのパイロット調査を16日間行う予定であったが、コロナ禍によりパイロット調査は2021年度に延期された。その代替として、2020年度は、研究枠組みの彫琢/映画作品の収集・鑑賞/2021年度以降実施の中国におけるフィールドワーク詳細の確定に注力できたため、今後の研究の方向性はさらに明確化された。また、国内外で開催された学会(オンライン)で研究経過報告を行い、フィールドワーク・データを必要としない論文を執筆・発表した。現地フィールドワークが不可能になったため、オリジナル・データの収集は遅れたが、本年度の主要な研究目的である分析枠組みの明確化、基礎的な文献資料の収集等はほぼ達成された。
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今後の研究の推進方策 |
ステップ1)2021年4月1日~2021年7月31日:研究枠組みの彫琢/映画作品の収集・鑑賞/本年度実施の日本および中国におけるフィールドワーク詳細の確定。 ステップ2)2021年秋以降(時期は、コロナ禍の収束状況による):中国でのパイロット調査(16日間):中国インディペンデント映画監督へのインタビューと製作過程の参与観察と流通・消費の場の参与観察・参加者へのインタビュー。 ステップ3)2021年秋以降(時期は、コロナ禍の収束状況による):中国でのフィールドワーク第1回目(61日間):中国インディペンデント映画監督(ドキュメンタリー映画監督三人)へのインタビューと製作過程の参与観察と流通・消費の場の参与観察・参加者へのインタビュー。 ステップ4)2021年10月中旬:山形国際ドキュメンタリー映画祭に参加し、中国インディペンデント映画(ドキュメンタリー)のトランスナショナルな流通・消費を観察し、生産の中心人物である監督にインタビューを行う。 ステップ5)2021年10月1日~2022年3月31日:上記、中国と山形でのフィールドワークのデータを整理・分析する。必要に応じて枠組みの修正。国内外の学会で研究経過報告を行い、論文を執筆・発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度である2020年度中(2021年2月)に、中国インディペンデント映画監督へのインタビューと製作過程の参与観察と流通・消費の場の参与観察・参加者へのインタビューからなる中国でのパイロット調査を16日間行う予定であったが、コロナ禍によりパイロット調査が2021年度に延期されたため。
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