研究課題/領域番号 |
20K12359
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研究機関 | 大阪経済法科大学 |
研究代表者 |
林 梅 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (20626486)
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研究分担者 |
鄭 雅英 立命館大学, 経営学部, 教授 (90434703)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 移住エスニック / 家族観 / 国民意識 |
研究実績の概要 |
本研究は、中国の少数民族の一つである中国朝鮮族を事例として、朝鮮半島→中国東北→日本・韓国という「移動の連続性」に着目して、その越境移動・移住の過程で形成・変容された国民意識を、家族観の変化と関係づけて明らかにすることを目的としている。 関連する今年度の研究実施状況は、次の二つの側面から整理することができる。 まず、研究業績についてである。①「移動の連続性」の前段階になる、19世紀末からの越境移動・移住により中国東北に定着した、朝鮮人社会にナショナルな帰属を巡る歴史的な出来事を分析した「国共内戦期中国東北朝鮮人のナショナルな帰属意識-延辺帰属論をめぐって」(鄭)がある。続いて、②「移動の連続性」の「再移動・再移住」段階になる、1990年代末から2000年代にかけて最盛期であった中国東北から韓国や日本へのトランスナショナルな移動に着目した、「トランスナショナルな移動と家族観の変容」(林)を分析した論文がある。これらの論文はいずれも査読を経て学会誌に掲載れた論文である。そして、③関連する重要な理論の一つである「文化の客体化」論に関する論理的整理や執筆も進められている(林梅)。 次に、調査実施についてである。コロナ禍にあって海外や国内移動が制限されるなかで、オンラインで可能な調査と資料収集を実施している。具体的には、本研究の研究対象になる、1990年代から2000年代に日本に移動・移住した在日中国朝鮮族のコミュニティの一つで参与観察を実施している。本団体は、2017年に一般社団法人として正式に活動を再開しており、コロナ禍のなかでも月一回のオンライン例会を実施するなど、活動を継続している団体として、参与観察に適するだけでなく、多くの会員の協力によって貴重な資料も収集することができた。本調査は今後も続けていく所存である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画書では、2020年8月は中国の延辺と東京、2021年3月には中国の延辺と韓国のソウルへの海外調査と国内調査が予定されていた。しかし、コロナ禍で海外・国内への移動が困難な状況にあって、オンラインで実施が可能な調査に変更した。具体的には、「移動・移住」に関連する資料の収集と、「再移動・再移住」の対象である在日中国朝鮮族の集まりでの参与観察である。特に、本社団の例会では「論壇」という内容も含まれており、参与観察(例会への参加、個人との交流など)では、本研究の目的に深く関連する議題(「自己アイデンティティの創造」)で討論会も予定している。
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今後の研究の推進方策 |
海外への渡航が可能になれば、昨年度に予定していた調査内容である中国と韓国での「移動・移住」に関連する歴史資料の収集とインタビュー調査を実施する。ただし、新型コロナウィルスによって海外渡航が難しい状況が続くのであれば、日本国内におけるオンライン調査をさらに工夫するだけでなく、海外へのオンライン調査も試みるなど、柔軟に対応する所存である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年8月と2021年3月に予定していた、中国の延辺と韓国のソウルにおける海外現地調査が、新型コロナウィルスの影響によりキャンセルせざるを得なくなったために、次年度の使用が生じた。 関連する海外外現地調査に関しては、2021年度に補足する予定であるが、難しい場合はオンライン調査の方法をさらに模索する。
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