本研究は、習近平政権の権威的政治の下で、メディア政策の新たな展開におけるメディアの構造と機能の変化を考察し、特にスマートプラットフォームになりつつある「新型主流メディア」が世論形成に与える影響の実態と課題の明確化をしようとした。 本研究の実施に当たって、1年目は習近平政権のメディア、世論に関する法整備と政策について考察を行い、情報環境、世論、メディアに関する中国共産党と政府の基本的認識を明らかにし、それを歴史的文脈の中で位置づけ、検討を行った。2年目は「新型主流メディア」のモデル考察に重点を置きながら、世論形成における役割を解明するため、「スマートプラットフォーム型」メディアと位置づけられる人民日報社の「人民日報中央厨房」モデル、上海報業集団(新聞グループ)の「澎湃新聞」モデルについて、文献調査を行うとともに、官製スマートプラットフォームとネットメディアの大手のIT会社(「今日頭条」、「ティックトック」)との相違点を明らかにするため、考察を行った。 上記の考察によって、党と政府は、これまでのメディア融合の現状を踏まえ、「メディアの高度な融合発展を加速せよ」と指示し、伝統メディアの市場競争の意識と能力を高め、巨大かつ強力なインターネットプラットフォームを確立し、伝統メディアを通しネットメディアの陣地を占領しようとする狙いが明らかになった。また、メディアのデジタル化とSNS技術の発展と利用の浸透と伴い、中国のニュースの生産と流通をめぐる環境に大きな変化が現れつつあるが、官製スマートプラットフォームとIT大手のプラットフォームメディア(微博や微信や今日頭条など)の影響力、競争力は縮まっていない。ネットユーザーの志向は必ずしも党と政府の望む方向と一致するわけではない。当局にとって、民意の反映と民意の統合はますます難しい課題となっている点を明らかにした。
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