本研究で2世以降のサハリン帰国者の体験を視野に入れ、次の問題を明らかにするプロジェクトである。1.政治的・社会的・文化的包括や排除のメカニズムを検討する、2. サハリン帰国者のホスト社会への適応問題の特徴を明らかにする、3. 帰国者と他の朝鮮族移民特との関係の中で発生するナショナル及びエスニック帰属意識を考察する、4.日本のサハリン帰国者と比較しながら韓国の2世・3世性の自己アイデンティティーや各言語に関する意識を明らかにする。 2022年、コロナ伝染病の状況が落ち着き、ようやく韓国でのフィールドワークが可能になった。9月には、安山市と仁川市で調査が行われた。仁川市では文化・教育空間「Mairen(マイレン)」に訪問し、釜山ロシア学の校長にロシア語母語話者の子どもの教育に関する企画についてインタビューをした。また、日本の状況報告し、仁川広域市未来教育委員会の委員長、ノモ仁川高麗人文化院の共同代表に韓国の状況について伺った。安山市においては、「多文化小さな図書館」を訪問し、館長に安山市の移民の状況について説明してもらった。なお、高麗人の支援団体「ミル」代表に最近のロシア語母語話者の生活や子どもの教育に関する意識の変化について聞き取り調査を行った。ソウル市ではKIN(Korean International Network)を訪問し、事務局長にサハリン・コリアンの若い世代の韓国への帰国についてインタビューした。調査の結果としてはサハリンコリアンの若い世代を含め、ロシア語を話すコリアンの韓国での教育での状況を考察することができた。2022年からロシアの政治状況やウクライナ戦争の結果、旧ソ連諸国からの移民が増加した現状であると確認した。そのため、ロシア語圏の移民を支援する地方行政や団体は、バイリンガル学校(韓国語・ロシア語)の組織化という問題に直面していることが明らかになった。
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