研究課題/領域番号 |
20K12369
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
金 明美 静岡大学, 情報学部, 教授 (50422738)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 東シナ海域 / 女性 / ジェンダー / 共同体 / 宗教 / 信仰実践 / 無縁 / 巫俗儀礼 |
研究実績の概要 |
2023年度はコロナ明けとなったが、本研究が対象とする国内外調査地での滞在調査は時期尚早の部分があったため、昨年度同様に文献調査を中心に行い、現地調査は2024年3月の春休みに開始した。 文献調査は、昨年度に引き続き4つの観点からの文献を検討し、データベース化をさらに進めた。4つの観点からの文献とは、①調査対象地の女性主体の共同祭祀や信仰実践を通時的に理解するために必要な地域の歴史的文脈に関する文献、②現地調査による共時的なフィールドデータを記述・分析する際に必要となる方法論・理論的枠組みに関する文献、③「宗教」や関連諸概念を再考する宗教学、民俗学、歴史学などの文献、④ジェンダーの視座から「宗教」や「共同体」との関係について検討・示唆している文献である。これらの検討を通してまとまりつつある考えについては論文にすべく昨年に引き続き準備を進めた。その中間報告は「共同体と無縁:女性の信仰実践」というタイトルで2023年5月中旬に非常勤先の集中講義で発表し、さらにこの集中講義の反省を元に内容を充実化させたものを2024年5月中旬の集中講義で発表する予定である。 現地調査は、2024年3月の春休みに韓国済州島の村落での調査が可能となったため、旧暦の2月15日前後の祭りの時期に合わせて滞在調査を行った。この祭りは1年に1度この時期に島を一周する来訪神である風の神ヨンドゥンを迎え送る巫俗儀礼のクッである。調査地の村落で行われる小規模な儀礼だけでなく、国家無形遺産に指定された地域で多くの観客を招いて行われる大規模な儀礼の参与観察も行った。また、現地のネイティブ研究者への聞き取りや研究者の学習会への参加も行った。これらを通して、済州島の巫俗儀礼の地域的な伝播や変容に介在する諸要因や地域区分、死者霊や「祖先」概念について文献資料では得られない重要なデータや知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究に必要な現地調査のデータを収集することができなかったためである。2023年度は5月連休以降にコロナ明けとはなったが、調査対象地である国内外の村落ではコロナ収束への警戒感があり、また自身の体調も整わなかったこともあり、滞在調査がほとんど実施できなかった。現地調査は2024年3月の春休みに韓国での調査から再開したばかりである。なお、中国での滞在調査はコロナとは別途出入国時をはじめ手続きが煩雑かつ難しい事情がある。また、現地調査の代替として行った文献研究に関して集中授業での発表のみに終わったのは、所属機関における教育・運営上の諸業務や家庭内及び個人の諸事情が重なり、内容を充実化させるための作業を連続して行うことができなかったためである。
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今後の研究の推進方策 |
来年度はこれまで実施できなかった国内外での現地調査を実施し、本研究を推進させていきたい。ただ、中国での調査については現地の研究者等からの助言なども踏まえ慎重に検討していきたいと考える。万一、何れの調査地でも現地調査が困難になった場合は、代替措置として現地に関する文献研究をはじめ、現地に行かない形での調査研究を推進することとする。来年度は昨年から準備している論文を完成させるだけでなく、他の論文も作成・発表していきたいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度は5月連休以降にコロナ明けとなったとはいえ、調査対象地の村落でのコロナ収束への警戒感や自身の体調面が整わなかったことなどがあり、当初予定していた現地調査が1件のみ(2024年3月に実施)しか実施できなかったためである。実施できていない現地調査については、上記のことを十分考慮しながら、次年度実施する予定である。次年度の使用額は、現地調査の際に必要とする旅費、書籍等の文献などの物品費、消耗品、資料整理のための人件費に充てる予定である。
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