研究課題/領域番号 |
20K12373
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
野村 亜由美 東京都立大学, 人間健康科学研究科, 准教授 (50346938)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | スリランカ / 高齢者 / 認知症 |
研究実績の概要 |
スリランカでは西洋医学でいうところの「認知症 Dementia」に相当することばを日常的に聴くことはない。有識者(医師、大学教員、保健省局員ら)を除き、地域で生活する人びとから文化的ボキャブラリーとして語られることはないが、個別具体的な例として「家族の問題で記憶をなくすことがある」と語られることはある。そのような状態を回避する方法として、一般的に語られるのは宗教的行事に従事することや、瞑想をすることである。しかし、これらの回避方法は、「記憶をなくしたとき」の特殊な行為ではないため、人びとのあいだで共有された慣習ではない。また、コミュニティ内の老人をケアするのは誰か?という場合も同様に、ケアの対象を日常的に意識して行っているというよりも、何か近隣間でconflictがおこった際にはじめて「ケアをしない対象」とその理由が顕在化する。このような仕組みを考えたとき“認知症なるもの”は、常に老人の健康問題として語られるのではなく、家族やコミュニティの問題を解消する別の回路として立ちあらわれることがわかる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度は新型コロナ感染症(COVID-19)に伴う渡航制限のため、現地調査を行うことができなかった。そのため、国内において文献検討を行ったり、オンラインで現地の様子をうかがうなど研究手法を切り替えた。しかし、本研究の主な調査対象者らは、地方都市で生活している高齢者ということもあり、直接オンラインを通じたインタビューを行うことができなかった。 2021年度も同様の状態が続くことが懸念されるため、国内で調査結果の整理などを行い、渡航可能になった際に、調査研究を再開する。
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今後の研究の推進方策 |
現在注目しているのは、津波被災後のスリランカのように急速な社会発展-“圧縮された近代”-を生きる人びとの<あいだ>の復興格差や均質化された語りのなかで、とりわけ身体や心の変化を、どのような空間に位置づけ、そして意味付けるのかということである。そして、身体や家族の異変を語るためにどのような“宗教的”語りを必要としているのかという点に着目して研究を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はCOVID-19のため、調査地に渡航できなかったため、2021年度に計上する。
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