研究課題/領域番号 |
20K12380
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研究機関 | 名古屋商科大学 |
研究代表者 |
鎌田 真弓 名古屋商科大学, 国際学部, 教授 (20259344)
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研究分担者 |
村上 雄一 福島大学, 行政政策学類, 教授 (10302316)
藤岡 伸明 静岡大学, 情報学部, 准教授 (40799962)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | オーストラリア / 国際労働移動 / 移民・労働政策 / 白豪主義 / 日本人商店主 / 真珠貝採取業 / 年季契約労働者 / ワーキングホリデー制度 |
研究実績の概要 |
鎌田:予定していた西オーストラリア州での現地調査はできなかったが、豪国立公文書館・図書館・西豪州公文書館のデータベースで、20世紀初頭の西豪州で商店経営を行った日本人に関する史資料の所蔵状況を確認、ウェブサイトで公開されていない史料はデジタル化申請を行なった。さらに「村松商店」の1500ページ超の帳簿を入手、デジタル化を行い共同研究メンバーで共有した。入手した史資料やウェブ上で公開されている史料を精査して「村松商店」の真珠貝業の展開と雇用状況の分析に着手した。また、オンライン研究会を主催して、それぞれの問題意識と今後の共同研究の課題を共有した。 村上:予定していたオーストラリアでの現地調査を実施できなかったため,日本で入手可能な書籍やオンラインによる新聞記事検索等を通じて,主要な研究対象である日本(人)と白豪主義の関係について情報を収集した。 藤岡:予定していたオーストラリアでの現地調査を実施できなかったため,新聞記事やニュース報道を通じて,オーストラリアの移民制度・移民政策の現状と変化について調査した。主要な研究対象であるワーキングホリデー制度については,オーストラリア在住の日本人にオンラインのインタビューを実施して最新の情報を収集した。 松本:愛媛県の明治期から昭和前期のオーストラリアへの出稼ぎ者に関する伝記的記録(山本亀太郎および三瀬豊三郎の覚書)の翻刻作業とその検討を行なった。 田村:西豪州の研究者が保管している日本人商店経営者および出稼ぎ者の記録や写真の所在を確認した。豪国内での移動も制限され、予定していた西オーストラリア州での史料の確認作業や現地調査が実施できなかったため、ウェブサイトで公開されている史資料や鎌田がデジタル化した帳簿の精査に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染拡大の影響により、鎌田・村上・藤岡・田村が予定していたオーストラリアでの現地調査を実施することができず、研究の進捗に支障をきたしたことは否めない。しかしながら、デジタル化されウェブ上で公開されている史資料の調査および分析や、オンラインによる聞き取りを行いながら研究を進めた。研究会もオンラインを使用して予定通り2回開催し、問題意識の共有と研究報告に基づく意見交換を行なった。
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今後の研究の推進方策 |
鎌田:引き続き村松商店の真珠貝採取業の展開に焦点を当てて、日本人年季契約労働者の雇用におけるネットワーキングや、当該商店が中心となって構築した互助機能、かつ商店経営を通じた現地社会への能動的適応戦略を、史資料を精査することによって明らかにする。さらに、渡航が可能になれば、西豪州の各地の市立図書館や博物館での史料の調査や現地調査を行いたい。加えて共同研究の統括を行う。 村上:19世紀後半から20世紀前半にかけて北部オーストラリアを中心に活動していた日本人商人や労働者たち等が、当時のオーストラリア連邦の国是であった白豪主義政策に対して与えた・与えなかった影響について、村松治郎を中心に据えながらの検証を継続して進めていく。渡航が可能になれば、オーストラリアでの現地調査を行う。 藤岡:農業,鉱業,建設業における単純肉体労働のように,身体的負荷が大きくオーストラリア人が忌避しがちな労働を誰に委ねるか(誰が引き受けるか)という観点からオーストラリアの移民・労働政策を現代から過去に向かって再検証していく。昨年度まではワーキングホリデー制度を中心に検証したことを踏まえ,今年度はPacific Labour SchemeやSeasonal Worker Programmeの実態を探ることから始める。中長期的には,19~20世紀の真珠貝採掘業まで到達することを目標とする。渡航が可能になれば、オーストラリアでの現地調査を行う。 松本:引き続き、伝記的記録の校注作業を続行し、明治・大正期における日本人の国際的出稼ぎないし移民の生活戦略を検討する。 田村:19世紀後半から20世紀前半に西豪州で商店経営を行なった日本人商店主に関する史資料の所在を確認し、未公開の史料はデジタル化の可能性を探る。引き続き、入手済みの史料を精査して日本人商店経営者の現地適応戦略を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大の影響により鎌田・村上・藤岡は予定していたオーストラリアでの現地調査が遂行できず、また豪在住の研究協力者の田村も、州境を越えての移動制限があり、西オーストラリア州での調査を見合わせた。さらに、日本国内で予定していた研究会の開催はオンライン開催に切り替えたため、国内・海外旅費の使用額が0となった。2021年度に渡航が可能になれば、それぞれの調査地域での現地調査を行う。現時点では日豪間の航空便は減便されており、かつ検疫が必要で調査計画を立てることができないため、旅費の算定が不可能な状況にあるが、もし本年度に渡豪が可能になった場合は、当該研究申請時よりも航空券の高騰が見込まれるため、大半は旅費として使用予定である。
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