研究課題/領域番号 |
20K12380
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研究機関 | 名古屋商科大学 |
研究代表者 |
鎌田 真弓 名古屋商科大学, 国際学部, 教授 (20259344)
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研究分担者 |
村上 雄一 福島大学, 行政政策学類, 教授 (10302316)
藤岡 伸明 静岡大学, 情報学部, 准教授 (40799962)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 国際労働移動 / 移民・労働政策 / 白豪主義 / 真珠貝採取業 / 日本人商店主 / 年季契約労働者 / ワーキングホリデー制度 |
研究実績の概要 |
2021年4月18日と9月26日、および2022年2月15日に計3回の研究会をオンラインにて開催し、研究成果を共有した。なお新型コロナウィルスの影響により、予定していた現地調査を実施することは叶わなかった。 鎌田は、豪国立公文書館に所蔵されている村松治郎のファイルを精査して村松商会の真珠貝事業の実態をまとめ、「村松治郎:真珠貝採取ビジネス」として研究会で報告した。さらに村松商会の1500ページ超の帳簿を分析し、コサックでの事業の実態を明らかにするための作業に取り掛かるとともに、西豪州の研究者が保管していた日本人商店経営者に関わる写真や帳簿など史料の分析に着手した。加えてこれまでの共同研究の研究成果を英訳・デジタル化をして広く公開するとともに、一部史料は追手門学院大学附属図書館に寄贈し、デジタルアーカイブスの構築に寄与した。 村上は、日本で入手可能な書籍やオンラインによる新聞記事検索等を通じて,主要な研究対象である日本(人)と白豪主義の関係について情報を収集した。9月26日の研究会では「Pearling Act 1912」というタイトルで、英国籍保有者の日本人、村松治郎の真珠貝採取船所有の権利が制限されることになった西豪州議会における同法案の審議について報告した。 藤岡は、新聞記事やニュース報道を通じて,オーストラリアの移民制度・移民政策の現状と変化について調査した。また、オーストラリアとの比較を念頭に日本における外国人受け入れ政策の現状を検討し、その成果を2021年11月の日本社会学会大会で報告した。 松本は、上記のデジタルアーカイブスの構築に寄与するとともに、愛媛県出身の商店経営者に関わる記録の翻刻や史料の精査を行った。田村は、西豪州の研究者が保管している日本人商店経営者および出稼ぎ者の記録や写真の所在を確認するとともに、引き続き村松商会の事業に関する資料調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染拡大の影響により、鎌田・村上・藤岡・田村が予定していたオーストラリアでの現地調査を実施することができず、研究の進捗に支障をきたしたことは否めない。しかしながら、デジタル化されウェブ公開されている史資料の調査・分析や、新聞記事やニュース報道、先行研究などを使って研究を進めた。さらに、手元にある史料や研究成果のデジタル化を積極的に行い、日本および豪州の図書館での資史料の保存と公開に向けた活動を行った。研究会もオンラインを使用して3回開催した。
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今後の研究の推進方策 |
鎌田は引き続き村松商会に関する史料の分析を行うとともに、日豪の公的機関と連携して収集した史料を整理し、保管と公開に向けて作業を行う。特に遺族から寄贈された村松治郎に関する史料(帳簿)に関しては、西オーストラリア州立図書館に寄贈することが決定しているので、連携して調査・分析を行う。また写真類に関しては、遺族の許諾を得ながらデジタル版を公開できるようまとめたい。さらに西豪州の研究者から寄贈された史料の分析を行うとともに、田村とともに西豪州での調査を予定している。 村上は、国内では主に文献調査を行うとともに研究会で成果に関する意見交換を行い、オーストラリアでフィールドワークや史資料収集を行う予定である。 藤岡は、昨年度に引き続き、農業,鉱業,建設業における単純肉体労働のように,身体的負荷が大きくオーストラリア人が忌避しがちな労働を誰に委ねるか(誰が引き受けるか)という観点からオーストラリアの移民・労働政策を現代から過去に向かって再検証していく。今年度は飲食業や小売・卸売業も研究対象に追加して、アジア系食品ビジネスの成長過程を考察する予定である。状況が整えば、オーストラリアでの現地調査を予定している。 松本は、伝記的記録の校注作業を続行し、明治・大正期における日本人の国際的出稼ぎないし移民の生活戦略を検討する。田村は、入手した史料を精査するとともに、引き続き豪州にある個人所有の史料の所在を確認する。さらに、日本人商店経営者と比較のために、先行研究を通じて中国人商店経営者の現地適応戦略を分析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響により、鎌田・村上・藤岡は予定していたオーストラリアでの現地調査が遂行できず、オーストラリア在住の田村も西オーストラリア州での調査を見合わせた。日本国内で予定していた研究会の開催もオンライン開催に切り替えたため、国内・海外旅費の使用額が極めて少額となった。2022年度は現時点では豪州への渡航が可能になっているので、それぞれの地域での現地調査を行う。また、日本国内での対面式での研究会も開催したい。
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