2022年度は、研究期間を3年とした本研究の最終年度である。これまでの2年間は、新型コロナ感染症の世界的拡大のために海外調査ができなかった。しかし、最終年度にようやくシンガポールに渡航して、実態調査を行うことができた。 シンガポールへの調査は2022年8月に実現した。シンガポールから隣接国への渡航規制が依然として強く残っていたために、成長の三角地帯(SIJORI)の対象であるマレーシアやインドネシアへの渡航と調査はできなかった。しかしながらシンガポール国内の産業経済の動向や市街地再編の傾向などを把握した。シンガポールでは都市再開発が進展し、文化芸術政策が大きく再編されたことの影響が市街地にも表れていた。 この研究の第1の課題は、地域政策と空間政策の概念整理を行うことであった。第2の研究課題は空間政策を各国別に把握するだけでなく、大陸部と島嶼部の統合を推進するための空間計画の諸条件を考えることであった。これらを踏まえた今年度の課題は次の2点であった。つまり、第3の研究課題である大陸部と島嶼部の統合促進に関する政策の検討であり、さらにこれら3つの課題を総合的に考察することである。 総合的考察のひとつに空間開発の目標設定があるが、これにはフローとストックの2側面が考えられる。その中でフローの側面には、陸上・海上と航空交通の3種類の交通手段が考えられるが、まず航空交通の充実を考えるべきである。第2には海上交通が重要であるが、これは島嶼と大陸の接続を考える上で重要となる。ストックの側面の空間開発目標には物的側面と関係論的側面の異なる2種類が考えられる。物的側面の空間開発目標には、都市開発や地域開発が含まれ、関係論の側面には法制度の整備や非関税障壁の改善などが含まれる。フローとストックの双方の空間開発の目標の整合的な設定が重要である。
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