研究課題/領域番号 |
20K12385
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
榎並 ゆかり 龍谷大学, 政策学部, 助手 (90843392)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ムリッド / 交易ディアスポラ / 交易仲介者 / セネガル / アジア・アフリカ間交易 / 広州 / 新型コロナパンデミック / バンコク |
研究実績の概要 |
新型コロナパンデミックの影響により、広州からアフリカ出身の交易仲介者たちが本国へ帰国したことは2021年度の委託調査により明らかになっていた。2022年度は、11月にバンコク調査、2月~3月にセネガルとパリで調査を実施した。 11月上旬のバンコクのアフリカ出身者集住地区での調査によると、以前の調査で協力してくれたセネガル出身者はすべて帰国したままで、バンコク在住歴が長いマリ出身家族の店舗のみが営業していた。この店舗はタイの工場で製作したアフリカ向けの布を中心に交易を行っている。バンコク生まれの息子が店舗を経営している。アフリカから注文が入ると発送するようで、過去のバンコク調査での写真を見せたところ、彼らは知人・元店員とのことであった。短期滞在のアフリカ出身者は帰国したままとのことであった。 2月のセネガル調査では、都市部の市場は活気に満ちていた。首都ダカールの布市場では中国からの輸入とみられる商品があふれており、交易は継続していることが証明できた。一方で仲介者となっていた広州在住のセネガル出身者は帰国したまま連絡がつかなくなっていた。昨年度の委託調査の結果から、取引の形態が大きく変化したこと、すなわちオンラインを活用した商取引に変化したことが明らかになっている。 今後、中国、タイなどのアフリカ向け商品の生産国に、以前のようにアフリカ出身の交易仲介者が戻ってくるのであろうか。これが次年度の新たなリサーチクエスチョンとなった。3月のパリ調査では、セネガル出身者が多く活動していた。エッフェル塔の下で観光客に土産物を販売しているセネガル出身者にインタビューしたところ、予想通りパリ在住歴が長い人々であった。シャトールージュ駅付近のアフリカ街では、多くのセネガルレストランがあり、店主も客もセネガル出身者であり、やはりパリ在住歴が長く、活動を継続している。以上のことが調査から明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ようやく新型コロナ感染症の世界流行が終息したところであるが、地域により入国制限などの温度差があったことから、海外調査を実施しても調査地に対象者であるセネガル出身者が戻っていなかった。セネガル本国での調査から交易が継続していることは確認できたため、①拠点都市はどこなのか、②どのような交易形態をとっているのか、③誰が交易の仲介を担っているのか、を調査により検証する必要がある。 2022年に予定していた調査は、2023年度に持ち越しとなっている。2023年度が最終年度となっているが、この状況では期間内に研究成果が出せないことが予想されることから、2024年度までの延長を希望している。
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今後の研究の推進方策 |
2000年代から広州を拠点に、アフリカ諸国に中国製品を送るための取引が行われてきた。しかしながら、新型コロナパンデミックにより、様相が一変してしまった。中国在住のアフリカ交易商人は本国へ引き上げてしまった。一方、フランス在住者は本学に帰国することなく商業活動を継続している。中国とフランスの違いは何だったのか。広州から多くのアフリカ出身者が帰国した背景には、アフリカ出身者に対する政府の政策と当地の国民からの差別などが原因と予測できる。このことについて文献調査により検証を進めたい。 また、現地調査として、アジアの交易都市へ出向き、広州に代わる新たな交易拠点の萌芽が生まれていないか検証したい。調査地の候補として、ドバイ、バンコクの他、韓国(ソウル)、ベトナム(ホーチミン)、マレーシア(クアラルンプール)、インド(ムンバイ)が考えられる。調査地を絞り込むための情報収集を行い、現場を訪問する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度の海外調査ができなかったため、当該年度に前年度分予算と併せて海外調査を行い、旅費の差額が13570円ほど生じたため。
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