令和5年度は,ハンディGPSを用いて(D')地理不案内な観光者を想定した被験者による疑似的な避難訓練を実施し,被験者の徒歩避難時間と移動軌跡データの取得を行った.また,地理不案内な観光者(避難者)が避難行動を起こすトリガーを探るべく,被験者にヒアリングした.なお,この疑似的避難訓練は,当初予定していた「(D)観光従事者における率先避難行動のヒアリング調査」の実施をコロナ禍のため断念し,代わりに(D')地理不案内な観光者を想定した被験者による疑似的な避難訓練として行ったものである.加えて,令和5年度(2023年度)は,以下の(F)と(G)を行って,率先避難者の行動が地理不案内な観光者の津波避難行動に対して,どのような影響を与えるのかを検討した. (F)津波率先避難に関する意思決定モデルの構築 令和3年度に実施した「(E) Web調査による津波避難に関する意識調査」の結果,および小樽観光の特徴や観光行動モデル構築に関する知見(これまで研究代表者らが行ってきた研究に基づく知見)等をもとに,津波避難に関する観光者の津波避難行動モデルを構築した.このモデルは下記の(G)で行うマルチ・エージェント・シミュレーション分析において,エージェントの基本的な行動ルールとなる. (G)津波率先避難行動のマルチ・エージェント・シミュレーション分析 小樽市内の堺町通りを研究フィールドとして,上記(F)で構築した行動モデルを基に,率先避難行動を行うエージェントと地理不案内な観光者エージェントに着目し,マルチ・エージェント・シミュレーションを用いて,観光者の津波避難行動に影響を与える要因を検討した.今回のマルチ・エージェント・シミュレーションでは,周囲の人に声をかけながら避難する率先避難者が多いほうが,緊急避難場所に到着した人数が増えた.一方,避難時間は,率先避難者が多いほうが,多少時間を要する結果となった.
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